重ねての質問に眉を顰める。自らの世界等というものは、それを普通として過ごしてきた世界だ。その"普通"というのは結局の所主観的なものではある。しかしそれは人生を共にしてきた世界なのであれば誰しもがそう思っている、もしくは違和感の一つも感じていないだろう。というのはあくまでも憶測でしか無く、疑問や違和感を感じている人間も少なからず存在しているのものではないか……少なくともこの男は違和感無く過ごしていた様にも見える。しかしまた彼もその中での葛藤や疑問は過去に経験しているのだろう。
男は表情を戻し、一呼吸置いてから答えを口にする。

「……私にとってはごくありふれた世界だと思っています。
それでも異世界と呼ばれる場所の中には、そうでは無い世界もある、と言うのはまぁ……認知はしておりますが」
この男、異世界の事を何処かに存在するものとして認知しているのだろうか?否、未だ御伽噺の様に思っているに違いない。そうでなければ自らの世界を"ありふれた"等とは言わない筈だ。

「あぁ、すみません。こんな程度の物では回答にすらなりませんね」
男は一呼吸置いた後、話を続ける。

「人間が人間の為に働き、協力し合う世界…とでも言いましょうか。そこには何でもあります。学び、職、娯楽、医療や科学技術等……そしてそれらの力を借りる事で我々は助けられてきました。いえ、恐らくそれは人間だけではありません。動物やその他生物…全てとは言えないのかもしれませんが、今を生きている全ての命の為に尽くし共存する、それはとても素晴らしい世界と言えるのではないでしょうか……………」
一通り話すと和らいでいた表情は、一瞬の内に凍りついた。

「……と言うのは、表向きの話です。私からは以上です」
これ以上はこの話を続ける気は無いようだ。