Chapter06-01

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2026-02-01 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

相も変わらない様子の白い部屋には
いつも通り椅子が一つだけ。
座らずとも、答えずとも、あなたが望めば元の場所には戻れよう。
もし座るのならいつも通り──壁が開けて、〝向こう側〟に姿がひとつ。

そこにいるのは──人型ではあったが、どこか人らしくないものだった。
白い部屋の中、静かに座っているその姿は真っ黒な影法師のよう。
人では無く、どこか──夜そのものがそこに居るような、そう思わせる姿であった。

奇妙なものではあるが、それはきっとあなたを恐れさせるものではなく、
どこか安心感のあるものに感じられるのかもしれない。

夜空に月が浮かぶように真っ白な顔、
あなたの事をじっと見据えるひとみは夜の色。
驚く様子も慌てる様子も無く、そこに静かに在った。

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「やあ。いい夜だね」

中性的な声は響かず静かなもの。
あなたの言葉を待つように暫くじっとあなたを見詰めた後に、
ややわざとらしく、人間を模すように首を傾げる。
今までの問い人と同様、あまりあなたの事を正確に認識出来ていないのだろう。

とはいえ、ソレにとってその事はさして問題ではないらしい、
様子を窺った後、まっくろな口を開く。

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「コレはどうやら君に問い掛けるために呼ばれたらしい。
 ──ひとまずコレの事は『墓守はかもり』と呼んでくれればいいよ。
 本来は眠りたい子を眠らせるためのものなのだけどね」

コレ、というのは恐らく一人称であるのだろう。
墓守を名乗ったその影は、区切るようにカランと音を鳴らす。
手に持った銀色のカンテラの音のようだった。
枯木の意匠のカンテラに、青い光が点っている。

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君にとって死は、どれぐらい遠いものだろう?

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「ずっと遠くの終着点にあるものだろうか。
 いつでも首筋に感じるものだろうか。
 それとも、毎夜のように訪れるものだろうか」


──あなたにとって死とはどれぐらい遠いものですか?
Answer
今回もまた、目の前に現れた存在は人ならざるものと考えるべきなのかもしれない。尤も、今まで出会った存在が本当に人間なのか等、確証は一切無いのだが。
それにしても良い夜……?何を言っているのだろう。部屋に居るのに時間がわかるのかも疑問だが、夜に良いも悪いも無いのではないか?警戒すべきもの……男にとってはそういうものでしかないのだろう。
現に、夜は感情的になりやすい人間は多い傾向にあるというのも事実としてあるらしい。だからこそ、人の命に関わる事件は夜に起こりやすいのだろう。尤も、どこに目を向けても格差の目立ちやすい時代では、関係のない話となってしまったのかもしれないが。
それでも尚夜を好み、ロマンチック等と発言する人間というのも存在はしている。それは感情で物事を話している故の発言か、本当に何も考えていないのか……どちらにせよ男には理解し難い話である。
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「貴方にとってはそう思うのでしょうね」

如何にもこの男らしい返しである。しかし男はそれ以外の返しを口にはしなかった。する気も無かったのだろう。
そして質問者の問い掛け……どうやら"死"と言うものの距離と考えて良いのだろう。ならば男の回答は決まっているものと見ても良い。以前の様な感情が主となる問い掛けが続く様であったのならば……いや、これ以上続けたとて全ては憶測としか言いようがないだろう。
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「私自身の"死"と言うものであれば近くもあり遠くもあるのかもしれません」

非常に曖昧であるが、一般的な人間の考える"死"はこれが一番近しいものなのかもしれない。
"死"そのものを回避する事は不可能であると言えるが、人間は"死"までの距離を操作する事は可能であると言えるのかもしれない。それは良い意味、悪い意味どちらにでもなってしまうものであるのだろう。
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「死までの距離はともかく、いざ死に到達した際は基本的に一瞬としか考えられないのでは?
痛みがある、それでもがき苦しむのというのであれば、感覚が壊れていない……つまり、生を諦めてはいないと言う事であると考えられます」

痛み自体が死に直結しているとは、一概に言える事ではないのだろう。痛みと死の境に繋がる"原因"が来てしまう事が殆どである。その"原因"が双方に共通しているかも、予測する事しか出来ない。
男は一呼吸置き、更に言葉を続けただろう。
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「まぁ、これは妄言と捉えても良いものです。私は死やそれに近しいものを経験した側の存在とは、言い難いのでしょうし」

今回の問い掛けで語られている男自身の"死"の解釈と言うのは、本来人間がこの問いに対して考えるであろう"肉体の生命活動の停止"の事なのだろうか?