Chapter05-04

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-11 04:00:00

クリックで開閉
icon
「……ええ。なるほど。とても良いわ」

彼女は椅子の背に淡く寄りかかり、足を組み替える。
ゆったりとした仕草なのに、その赤い瞳だけはどこか鋭く、
あなたの胸の奥を探るように光っていた。

icon
「“差し出す”という行為はね、
 裏返せば“奪われてもいい”という覚悟なのよ。
 時間を奪われても、血を奪われても、自由を奪われても──
 それでもいいと思えるほど誰かを好きになる。
 それが、愛の輪郭を決めると私は思っているの」

icon
「だから、どこまで差し出せるか──
 その答えは“あなたがどんな愛を求めているか”を暴いてしまう

icon
「……忠告でも何でもないわ?
 ただの私の持論で、ただの老婆心と思ってもらって結構よ」

コン、と靴先が床を軽く叩く。
それは思索の区切りでもあり、次へ続く扉のノックのようでもあった。

icon
「ねえ。差し出せる量が“あなたの愛”を示すのだとしたら……
 じゃあ、“相手の愛”はどう測ればいいのかしら

icon
「どうしたら誰かの“愛の深さ”を確かめられるのかしら?」

──あなたは相手の愛を測るためにはどのような事が必要だと思いますか?
Answer
"差し出す"事が裏を返せば"奪われても良い"……?どこまで差し出せるかでどんな愛を求めているか暴ける……?いくら持論だとしても、実に巫山戯た話だと感じられるのではないか?しかしそれが真実なのであれば男も少なからず何かしらの"愛"を求めていると言う事になるのだろうか?断定させる事は危険極まりない気がするものだが。
そして自らの愛と来て、次は他者の愛と来た。男にとって理解不能な問い掛けの先に待つものがこれだとは……いや、そうなる事は彼が正常でなくとも多少の覚悟はしていたのだろう。
他者の愛の深さを測る為に何を必要とすると言うのか?"それ"の為だけに法に触れ、罪を犯せると回答する人間が居ると言うのならば……それ程愚かしい事など無いのではないだろうか?
icon
「そう言った思考が人の持つ"それ"を奪い、時には人を殺める……そうお考えになった事は?
あぁ……いえ、恐らく 吸血鬼 貴方の様な存在には愚問なのでしょうね」

いくら法に触れずとも、他者の神経を逆撫でする行為や、その為だけに相手に些細な悪戯をする等の悪行等と言うものは基本的に裏目に出る。それは加虐側からは悪気の無いものとして見ているのかもしれないが、被虐側からすれば最悪、今後の人格形成に関わるものになると考えても良いものだろう。人に憎しみという感情を植え付け、次第にそれは復讐心となり果てる……そんな事例も少なからず存在している。いくら"愛"が"憎しみ"の裏返しだとしてもだ。しかし表裏一体とされる双方が完全に同義となる時等一切訪れやしないのでないか?そうなってしまった人間は何処か壊れている、もしくはその加虐行動で壊されてしまったと言っても間違いでは無いのかもしれない。
icon
「……感情に囚われた存在というものが厄介なのは、人間も吸血鬼も同じなのでしょうか?でしたら人間以外と言うのにも"都合の良い"存在が確かにいると考えられる気がしますが……」

今男の目の前にいる存在が、他者の愛を測る為に何をしても良いと言う思考が確実だと言うのならば、それに囚われた人間と同じ思考なのだろう。
"愛"する者であれば、何をしても許される、と。
それらが"感情に飢えた存在"と称されたとしても、それらは何ら文句を言える立場には無いとも考えられるだろう。