Chapter05-03

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-11 04:00:00

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「……自由って、孤独とよく似ているの。
 誰にも触れられないから、何だってできるけれど……
 誰も自分を求めないという事でもあるわ」

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「愛は自由を奪う。でもね、
 愛だけが“そのひとを一人じゃなくしてくれる”」


私の持論だけれどもね、とあなたの答えのあとに告げ、
彼女はその言葉を噛みしめるようにゆっくり瞬きをした。
真っ白な部屋の光が、金髪に柔らかい縁を描き、赤い瞳に深い影を落とす。

吸血鬼は足を組み直し、少し身を乗り出す。
声の高さは変わらないのに、不思議と距離だけが縮まったように感じる。

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「……面白いと思わない?
 誰かを好きになるって、それだけで“前の自分”に戻れなくなるの。
 行動も、選択も、価値観すらも……気付けば誰かの影響で変わってしまう」

ふわりと肩をすくめて、少女は続ける。

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「私はね、愛って“どれだけ差し出せるか”で深さが決まると思ってる。
 時間でも、血でも、名前でも、自由でも、命でも。
 捧げた分だけ、その人はあなたの中に根を張るの」

コン、と椅子の脚が床を叩く。
アマリエはあなたへまっすぐ身体を向け、声を落として問う。

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「だから──あなたはどう?」


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愛のために、自分のどこまでを差し出せる?

──あなたは愛のためにどこまで出来ると思いますか?
Answer
男は愛を理解することが現状不可能なのは勿論の事、どうやら孤独というものも理解できていなかったようだ。質問者の意見に、理解不能であるが故の思考が渦を巻くのみであっただろう。
それにしても彼の視界は歪んでいる様にも感じられ、気分は最悪とも言えるものだろう。
回答を辞めたい、といくら男が願えどもそんな願い等きっと届かない。今目の前にある問い掛けに向き合え、それと言うものが自らに与えられた任務という事なのだろう。
それにしても質問者は回答者が愛について理解していようとしていまいと、次々にその問い掛けを重ねてきている様だ。そんなものは今更なのかもしれないが。
愛の為にどこまで差し出せるか?差し出すものは何だって良いのだろう。物、金、血液、臓器、時間、人生……"愛"を理解さえしていれば、対象を"愛"する心を保持してさえいれば、それらはいとも簡単に差し出せるのだろう。
そもそも人間という生き物は理解していないものに対して何かを出来る程、器用なものなのだろうか?
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「臓器や血液提供が本当に "それ"だけでの行動で出来る等とは思えない。何故なら提供する側は、その時には本当に生きているのか等保証はありませんので。
事前に意思表示は出来れども、それが本当に人間に対しての"それ"と言える行動なのでしょうか?」

臓器や血液提供の意思を持つ者であれど、全人類に対しての"愛"でそんな事が出来る訳がないと考えている様だ。別の感情……いや、もしかするとこういった意思というのもただの自己満足と考える人間の事を、男自身は今まで見て来たに違いない。
男の住む世界では、医療技術は革新的な進展を遂げているとまで言われているが、移植については未だに異国と比べ根付いておらず、今でも臓器提供を待ち続けた結果、それが間に合わず死を迎える患者は後を絶たないと言うのが現状である。
これら二つを併せて考えると、その世界では医療が進んでいるとも遅れているとも言い難く感じられる。
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「……少なくとも私は自身の臓器提供であれば一切出来るものでは無い、と考えております。こんな壊れかけのものが役に立つとは、到底思えませんので」

男はあくまでも事実を語ったのみ、なのだろう。年齢と共に臓器も弱っていくものであり、不摂生をしていれば尚更それも早くなると考えられている。だからこそ、彼は臓器を提供しない選択肢を押し通している様だ。
人は男のこの発言に対しても、自己"愛"だと言うのだろうか?そうであるのならば男にも"愛"はあると解釈付けることは出来ない訳ではないのではないか?本人は気づく気配は無さそうだが。