Chapter05-02

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2026-01-11 04:00:00

クリックで開閉
icon
「私はね……愛って、とても厄介で、
 でもどうしようもなく惹かれるものだと思うの。
 血みたいに温かくて、時間みたいに残酷で、
 それでいて、どんな者でも変えてしまう」

あなたの言葉を聞いて、吸血鬼はぽつりと自身の考えを零す。

icon
「あなたの言う事はきっと正しくて、
 それでいて間違っているのでしょう。

 明日のあなたに訊いたら、5年後のあなたに訊いたら、
 5年前のあなたに訊いたら──きっと違う答えが来るの。
 愛ってきっと、それだけ不確かな事だわ」

彼女は細い足を組み替え、椅子の背に体を預ける。
真っ白な部屋の中で、その赤い瞳だけが深い影を帯びていた。

icon
「そう思わない?」

軽く首を傾げて笑うと、その笑みはころころと転がるように形を変える。
無邪気にも見えて、どこか深い絶望すら含んでいるような、不思議な笑み。

やがて吸血鬼は小さく手を合わせ、軽い音を鳴らした。
その一拍で、空気がまた別の問いへと向きを変える。

icon
「さ、次の問いに行きましょう?
 あなたは──愛に伴う不自由さについて、どう思う?

icon
「縛られる側としてでも──縛る側としてでも、
 どちらでもいいわ。少し考えてみて?」


──あなたは愛によって自由が縛られる事についてどう思いますか?
Answer
質問者が何を言っているのか理解できないのは、相も変わらずだ。そんなものに人生を振り回される、と言うのは人間の一種の弱さとも考えられるのではないか?
一般的な人間であれば確かに"それ"についての考え等と言うものは年月……それどころかあるきっかけにより、簡単に変わってしまうものなのかもしれない。
しかし五年前、五年後……どちらの己に問うたとて、男の回答は一切違わず同じものだろう。何故なら……
icon
「______ッ!!」

また、突如とした痛みが男の脳を刺激する。一瞬であったのは以前と同じだが、その痛みは以前よりも強く、鋭く感じられた。
あまりの痛みのせいか、男からは暫くの間呻く様な声が発せられていただろう。
息を切らしながら、男はどうにか己を落ち着かせ口を開く。
icon
「……様々な形として、現象として"それ"は確かに従来の人間に内在しているものでしょう。だからこそ貴方は"それ"に対しての一般的な人間の意見とは、簡単に変わってしまうものと解釈なさった、と。
しかしそれは少なからず内在を自覚している人間だからこそ、なのでは?
"それ"を一切理解する事の出来なかった人間と言うのは、考えを変える事等出来るのでしょうか?」

愛についての考えが、年月や他者の意見により簡単に揺らぐ程不確かなものでもあるのかもしれないが、それ以上にほんの少しであれども理解は必要では無いのか?理解できないものに対し、考えを変えられると言うのは成立するものでは無い様にも見える。そもそも、元々の個人の定義があるからこそ、考えが変わるものでは無いのか?それともいつか、必ずしも誰であれども理解する事が出来るものだとでも言うのだろうか?それこそ根拠が無い、と男には感じられる様だが。
icon
「……自由と言うのは"それ"だけのもので縛られる等とは、断言出来ないのではないかと思います。人間は"感情"そのものに縛られると言う事自体、不自由となるのでは?」

縛るものは何も"愛"だけだと本当に断言出来るのだろうか?怒り、悲しみ、恐怖、憎しみ等に縛られた結果人間というものは、それらの感情に支配される。それは幾度とも歴史と共に残されてきたのではないか?勿論、感情だけで歴史を動かしていたとは断定は一切しないが。