Chapter04-02

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-28 04:00:00

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彼の視線は壁へ、床へ、そしてあなたへ。
どこかで落ち着きどころを探しているようだったが、
それは“怖がり”というより“状況を整理しないと落ち着かない”という
彼の性分そのものに見えた。

魔女の弟子はあなたの答えを丁寧に聞き取った後、
目元にわずかな影を落として考え込んだ。

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「有難う御座います。
 ……参考にさせていただきます、うちの師匠が
 この部屋と似たような事をやらかしかねないので……」

……どうもこの魔女の弟子は苦労人らしい。
破天荒な魔女に振り回されているタイプの弟子なのかもしれない。

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「……もしよければ、もう少しだけ質問をしてもいいですか?
 またいくつか問い掛けないといけないようなので……」

何かを確かめたような視線の動きの後、そう口にした。
どこかに〝猶予〟が記されでもしているのだろう。

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「僕……こういう“空間の乱れ”みたいな現象には何度か遭遇してきたんです。
 主に師匠の……ああ、いえ、魔女の実験の副作用なんですが。
 でも……今回のは、それとは“質”が違う気がするんです。
 形は似ていても、根本が違う……というか」

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「……異なることわりと接触する橋の上に居るような、
 世界のあいだにいるような、そんな……」

そこまで言って、息を呑む。
それは不安や恐怖を呑み込むような仕草にも似ていて、
けれどもそれを貪欲に知りたがる様な研究者的な好奇も滲んでいた。

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「あなたは今までこうやって──
 異世界と接触するような状況に遭った事はありますか?
 ……無かったら、この部屋で他人と出逢うことに……どんな気持ちを抱いてますか


──あなたは異世界に関わりを持ったことがありますか?
──また、この部屋での邂逅をどう思っていますか?


Sample
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「……似たような経験はしてると言ってますけど、
 実のところ異世界と交信みたいなことは経験が無くて……。
 まさかこうして異世界と関わりを持つなんて!」

魔女の弟子は指先をそっと胸元へ寄せる。
息を整えるように、深くひとつ吸って──それから微かに笑った。

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「こうやって断片的にだけでも話せて、楽しい反面……怖いです。
 “未知”って……危険とは限りませんけど、油断も出来ないですから」

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「僕は……きっと異世界に関わるような事があったら、
 怖いと思いながらも……関わりたくなっちゃうとは思います。今みたいに。

 『魔女の弟子』だという外聞が無くなって『ただのアルヴェン』である場所でも、
 きっと僕は、『魔女の弟子』であることを喧伝しながら、異世界に関わるんでしょう」

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「……思った以上に僕、
 『魔女の弟子』である事に誇りを持ってるみたいです」

あんまり参考になる意見じゃないかもな、と恥ずかし気に頬を掻いて、
あなたはどうですかと改めて魔女の弟子はあなたにトイカケを差し出した。
Answer
魔女というものはいつの世も厄介そうな種族だと、内心感じている様だ。尤も男の思う"魔女"とはある占い師の女の事であり、彼女は紛れもなく人間の筈なのだが。
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「今までにも不思議な場所には、確かに行き着いた事はございますが……」

確かにあった、とだけは言うべきかと判断した様だ。お互い、それが仮説だったとしてもこの部屋に縁があった理由と言うものが、思い浮かぶ可能性も無きにしも非ずだ。しかし男が今まで行き着いた場所が、どんなものであったか等について長々と話をした所で、この部屋とは明らかに違うと考えられる要素が多い。それでは別の場所の話はあまり意味を成さないのではないか?ましてや辿り着いた経緯等も、それぞれで違うと言うのは明らかなものだと判断した方が懸命だろう。
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「あまり異世界、という感覚はなさいませんでしたね……確かに様々な種族の方をお見かけ致しましたが。
そもそも何処からが異世界と言うのでしょう?文化や思想の違いならば、国を跨げば異国では無く異世界扱いになるかと思われますが?」

異世界の定義等と言うものは、言語の通じる者に問う時点でそれぞれ違うものだと言うのが確かではあると、考えるべきなのかもしれない。
そもそも、男自身も異世界等と言う場所を御伽噺のものとしか思っていないのは、この部屋に来た四度目となる今でも変わりは無い様にも見て取れる。
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「ここであれ別の場所であれ、興味深い存在とは不思議な縁を確かに繋ぐ事が出来たのだと感じておりますし、そういった場に赴く事が出来るというのは感謝しております。ですが何故私の様な人間を選んだのかは……未だに疑問ではありますが」

元来引き篭もり気質の彼が、様々な場へと赴く様になったのも、こうした場で興味深い存在達と巡り会う事が出来たからなのだろう。
そして今回のこの部屋での邂逅……それもまた違いはあれども、以前の別世界と同じ反応と言った所の様だ。

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「ですが今回、私本来の役目を中心として据える必要は無いものと判断し、その関連は基本的に踏まえずに回答するものとお考え下さい。
突然、医学用語を詰め込んだ回答を語られてもどう反応すればいいのか分からない、と言うのが一般的な人間の意見でしょう。
貴方は私の担当患者でなければ、同業者でもありませんから。
尤も、その様な要素が入る余地が無い問い掛けが、殆どではありましたが」

何処の病院であろうと、基本的に患者に分かりやすく伝えるという事が重要視されている。
病状や対処法、薬理作用等いくら医者側に知識があれども、その知識が患者に伝わらなければ意味を成さないだろう。
それに今目の前にいる存在は"質問者"なのが明らかなのであるからだ。
問い掛けの主題の殆どが精神的なものだと思われるかもしれないが、そもそもこの男は"精神科医"では無い。そちらの知識等基本的に専門外と見ても良い。
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「……今までこの部屋で出会った存在には様々な方がいらっしゃいましたが、貴方の様な方もいらっしゃるのですね」

当初から男自身も疑問を感じていた要素の一つに対して、同じく疑問を持つ者が現れたからの言葉故のものかもしれない。
しかし何故彼等が選ばれたのか……それが解る時は来るのだろうか?