魔女というものはいつの世も厄介そうな種族だと、内心感じている様だ。尤も男の思う"魔女"とはある占い師の女の事であり、彼女は紛れもなく人間の筈なのだが。

「今までにも不思議な場所には、確かに行き着いた事はございますが……」
確かにあった、とだけは言うべきかと判断した様だ。お互い、それが仮説だったとしてもこの部屋に縁があった理由と言うものが、思い浮かぶ可能性も無きにしも非ずだ。しかし男が今まで行き着いた場所が、どんなものであったか等について長々と話をした所で、この部屋とは明らかに違うと考えられる要素が多い。それでは別の場所の話はあまり意味を成さないのではないか?ましてや辿り着いた経緯等も、それぞれで違うと言うのは明らかなものだと判断した方が懸命だろう。

「あまり異世界、という感覚はなさいませんでしたね……確かに様々な種族の方をお見かけ致しましたが。
そもそも何処からが異世界と言うのでしょう?文化や思想の違いならば、国を跨げば異国では無く異世界扱いになるかと思われますが?」
異世界の定義等と言うものは、言語の通じる者に問う時点でそれぞれ違うものだと言うのが確かではあると、考えるべきなのかもしれない。
そもそも、男自身も異世界等と言う場所を御伽噺のものとしか思っていないのは、この部屋に来た四度目となる今でも変わりは無い様にも見て取れる。

「ここであれ別の場所であれ、興味深い存在とは不思議な縁を確かに繋ぐ事が出来たのだと感じておりますし、そういった場に赴く事が出来るというのは感謝しております。ですが何故私の様な人間を選んだのかは……未だに疑問ではありますが」
元来引き篭もり気質の彼が、様々な場へと赴く様になったのも、こうした場で興味深い存在達と巡り会う事が出来たからなのだろう。
そして今回のこの部屋での邂逅……それもまた違いはあれども、以前の別世界と同じ反応と言った所の様だ。

「ですが今回、私本来の役目を中心として据える必要は無いものと判断し、その関連は基本的に踏まえずに回答するものとお考え下さい。
突然、医学用語を詰め込んだ回答を語られてもどう反応すればいいのか分からない、と言うのが一般的な人間の意見でしょう。
貴方は私の担当患者でなければ、同業者でもありませんから。
尤も、その様な要素が入る余地が無い問い掛けが、殆どではありましたが」
何処の病院であろうと、基本的に患者に分かりやすく伝えるという事が重要視されている。
病状や対処法、薬理作用等いくら医者側に知識があれども、その知識が患者に伝わらなければ意味を成さないだろう。
それに今目の前にいる存在は"質問者"なのが明らかなのであるからだ。
問い掛けの主題の殆どが精神的なものだと思われるかもしれないが、そもそもこの男は"精神科医"では無い。そちらの知識等基本的に専門外と見ても良い。

「……今までこの部屋で出会った存在には様々な方がいらっしゃいましたが、貴方の様な方もいらっしゃるのですね」
当初から男自身も疑問を感じていた要素の一つに対して、同じく疑問を持つ者が現れたからの言葉故のものかもしれない。
しかし何故彼等が選ばれたのか……それが解る時は来るのだろうか?