Chapter04-01

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-24 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

変わらぬ様子のその部屋の、ただひとつの椅子に腰を掛けると。
……掛けても。
視界の先には相変わらずの壁があるだけだ。
あなたが訝しんで壁を見ているだろううち──不意に

壁がひらけて、今しがた座っただろう人と目が合った。

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「うわっ、人がいる?!」

中性的な外見をした男性は、ぱちぱちと目を瞬いた後
壁があったろう辺りを確かめるように視線を移し、
それからまた改めてあなたへと目を向ける。

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「すみません、失礼ですが……ここ、精神界の簡易領域……ですか?
 ……いや、違う……にしては安定しすぎてるな……

大人というにはあどけないその人は、
訊ねておきながらぶつぶつと思考を整理するような呟きを続けて、
それから問いを擲ったことに気付いてはっとした顔で頭を下げた。

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「ああ、すみません……こういう現象は初めてでは無くて。
 でも僕が知っているのと根本が違うようなそんな気が……、
 というのはいいんでした。ええっと、あなたも巻き込まれた側……?」

まじまじとあなたの姿を見詰め、きっとあなたが頷くなりの反応を返した後、
うんうんと頷いて、それから軽い咳ばらいをした。

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「……そしたら、少し情報共有しておきますね。
 僕は『余白』の魔女の弟子、アルヴェンです。
 寝たと思ったらこの空間に居て、椅子に座ったらあなたが急に現れて……」

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「それで……僕からは、何故かあなたの姿がはっきりと見えないんです。
 ぼんやりしているというより、幾重にも形が重なっているような……そんな風に見えるというか。
 声もそうですが、一応意思疎通は出来なくは無さそう……ですね。
 ……あなたからもそう見えてるんですかね……」

トイカケをする側からはそう見えていたのだろう。
どこか会話が噛み合わない事もあるのかもしれないが、
それはこの部屋の性質も相俟ってか。

それから彼は、どこか居心地が悪いような、
申し訳ないように眉根を下げて首を傾ぐ。

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「それで──あなたもなのか分かりませんけれど、
 なんだか……あなたに問い掛けなければならないような、そんな気がしてくるんです」

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「こんなはっきり相手も見えてない状況で話を聞けなんて、
 失礼でしょうに、まったく……一体何考えてるんでしょうね……

長い溜息をひとつした後、魔女の弟子は改めてあなたを見た。
目の隠れがちな前髪がさらりと揺れた。

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「……あなたは、この白い部屋をどう思いますか?


──あなたは、この白い部屋にどんな印象を抱きますか?

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「あっ、そんなに難しく考えなくて大丈夫です。
 もっと直感的な印象というか、感覚的なものでいいというか……」

あなたの回答が返る前に、わたわたと魔女の弟子は手を振った。

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「何も無さ過ぎて落ち着かないとか、
 むしろ落ち着くというか、そんな感じの話でよくて……」

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「僕だったら──そうですね……。
 何も無くて、ぼんやりとした知らないあなたしかいない空間……。
 危険が無い事は直感できて、ある意味、穏やかな……。

 本来の自分の役目や立場から解放されたような、……
 ……解放感よりも、不安……のが強いかも知れません。」

思考の順路をパンくずを落とすように零した末、
辿り着いたものに納得したように頭を縦に振る。

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「──嫌いでは無いけれど、じんわりとした不安がある。
 この部屋、この空間に対して思うのは、僕はそんな感じかも知れません。
 少し話をしたら、変わるかも知れませんがね……。

 ……あなたはどうですか?」

Answer
今回の質問者は、何かと物わかりの良さそうな性格なのかもしれないと感じている様だ。今までの問い掛けは、感情と言うものが顕と感じられるものが多く、男自身も疲弊する事が多く感じられた。
しかし今回の質問者は理論に重きを置く傾向のある人間の様であり、男にとっても比較的対応はしやすいだろう。
質問者の口にする用語等については専門外の知識ではあるが、そこは男自身も出来る限りの理解を向けようとしている姿勢の様だ。
しかし感覚的、直感的に回答すると言う方が男にとっては比較的、難解なのであるが。とは言え、回答を出さない訳には進展は無くなってしまう可能性は高い。この部屋に来た一番初めを思い出しながら回答を考えるだろう。
男は初めて来た当初から思っていた様だ。まるで実験台……モルモットにでもなった気分だと。しかしモルモット側というのも中々乙なものだと感じているのだろう。少なくとも、この部屋へと来る度に興味や好奇心は増していると見ても良い。
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「この部屋がどう言った意図で造られたか、これを監視している存在の目的は何なのか、その双方が同一人物なのか、何の因果で私達はこの部屋と、そしてこの部屋で巡り会ったのか……好奇心や興味は次々と湧く一方尽きる事を知らない様でして。できる事ならばこの部屋の創造主に是が非でもお会いしたい、とも思える程ですね。」

創造主は果たしてどんな意図で、この部屋と言うものを造り上げたというのだろう。それも今の所は必ずと言って良い程相手は質問者、男は回答者という構図が出来ているらしい。
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「あぁ、ですが……色彩等を考えると、もう少々視界に優しいものにして頂ければ助かったのですが、まぁ贅沢を言える立場ではございませんね」

あまりにも白一色の背景を長時間見続けているというのも、割と目の疲労を感じさせるものなのかもしれない。基本的に椅子以外の家具が置かれていないのも、その理由としてあるだろう。
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「それに貴方の声がする、自分以外の音があるだけでもまともな方かとも思いますね。こことはまた違うものですが、人間は音も無く、何一つ物が置かれていない空間に閉じ込められると、次第に自らの発する音にさえも敏感になり最終的には発狂してしまう、等ともまことしやかに囁かれておりますからね」

これは一般的にも有名な実験としても、存在している話なのだろう。しかし実際に男はこの目で見た事は無い様であり、あくまでも大まかな情報に基づいたものではある。ましてや"個人差"と言うものもあるのは確実である為この話自体誇張、又は極端な事例だけを単純化させてしまったものだと思う方が良いのかもしれない。
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「ですがそうですね……不安があると仰る貴方の方がこういった環境に対して、我々の住む世界の"一般的な人間"としては正常な考えをお持ちなのかと」

この男は不安すらも感じていないのだろうか?それについては不明だが少なくとも"警戒心"と言うものは、今現在も少なからず持ち続けている事は確かだろう。しかしそれを易々と口にする事はしない姿勢を、現在まで見せている様だ。
果たして、この男は今回も"自らの意思の回答"を回避するのだろうか……?