Chapter03-01

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-17 04:00:00

クリックで開閉
あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

またあの部屋に来たようだ。
小さな部屋には相変わらず椅子は一つきり。
壁を向いた椅子の先には、やはり何も見えない。

──あなたが椅子に座れば、
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。
三角に身体を縮めて座っていた
長い髪を気だるげに結んだ白い服の女が、
あなたに気付いた様子で緩慢に顔を上げた。

icon
「……えー……なんか居るんだけど。どゆこと?」

icon
「あー……まあ……ども。
 名前とか……あー…じゃあ、シロでいいや、この部屋白いし。
 君は……じゃあクロ。なんかぼんやりしてるし」

知らないもの同士、名前を名乗るモンでもないでしょうと。
シロを名乗った女は畳んだ身体をほどいて、
んん、と小さな声を漏らしながら伸ばす。

icon
「……こーいうのって、なんかあったよね。
 白い部屋に閉じ込められて……なんか……出られない部屋的な?
 初対面でこんなんされてもおもんねー……」

icon
「なんかこの白さ落ち着かねー……、
 内側をざわざわ触られてるみたいなー……。
 なんでこんなとこにウチら集められたんだろ。おもろい話なんてできねーっつの……」

嘆息ひとつ零した後、
白い部屋の隅の方に目を遣って、女はぼやく。

icon
「まー……夢ん中……なんかな。何話してもいいっちゃいいのか。
 クロだってウチの無意識が作った偶像みてーなもんかもだし……
 返事返って来るかもわかんねーし、適当こくか」

女は髪を束ねているリボンをいじる。
それは落ち着かない子どものようであり、退屈を紛らわせる大人の仕草にも見えた。

icon
「クロはさ、生きる理由とかって何だと思う?


──あなたには生きる理由はありますか?

sample
icon
「別に生まれた時点で生きる理由とか要らね―とは思うけど、
 あった方がちょっと嬉しいというか、豊かな気がするんだよね。
 親が望んだから生まれた、以外の意味があった方が……なんかいいじゃん?」

言いながら、女はリボンをきゅっと締め直す。
その指先だけは、妙に確かだった。

icon
「生きる理由ってより人生の目的……って言う方が正しいのかも。
 小さい時からなんか、皆と一緒に~とか、大人の言う事を聞け~とかで
 結局どう生きたいかって全然分かんないなーってさ?

 ガチガチに矯正したくせに、急に「自分のやりたい事をやれ」って放り出されて、
 なんかそのまま今になっちゃった、みたいなさ……」

あなたをじっと覗き込む。
その視線は、答えを求めているようで、ただ誰かと共有したいだけのようでもあった。

icon
「クロはそういうのあんの?
 ウチも生きる理由っての──拾えるもんなら拾いたいんだよね。……皆目的に向かって歩いてるのに、
 ウチ一人だけ足を止めてる気がして、怖いからさ」

Answer
目の前の回答者の意図も目的も若者特有の口調も、いまいち分からない。いきなりクロと言われてもどうしろと言うのだろう。とはいえ名を名乗らずに済むのは有難い。自らの姿も彼女曰くぼやけているらしいので、本当にそうであるのならば好都合。それにまたこの真っ白な部屋ときた。となれば己に与えられた役目は一つなのだろう。
icon
「お気になさらず。私もつまらないお話しかできませんので」

基本的に感情で動く人間が大半を占める世の中己の様な人間の話を聞きたい、相談に乗ってほしい等と言う愚か者は存在しないのではないかと、この場を知る前までは思っていた。世の人間は圧倒的に"解決"よりも"共感"を望む者が多い。にも関わらず、相手は機械等の"モノ"ではなく未だに"生身の人間"を望んでいる。おかしな話だろう。"モノ"であろうと"生身の人間"であろうと嘘の時は嘘、真実の時は真実ではないのか。とは言え、肝心の質問者はどちらでも良さそうに感じられるが。
さて、そろそろ回答に入るべきだろう。今までの回答の傾向から男は今回も彼自身の回答を出していないことが多いが今回は果たしてどうなる事やら。
icon
「生きる理由なんて何でもよろしいのでは?それこそあろうと無かろうと。
ですがあるほうが良いとお考えであるならば、これから探していくのであれば現段階で見つかっていなくとも、問題は無いのではないのでしょうか?そこまで事前に見つけている事が本当に大事とでも?その理由をある時手放さなくてはならない時が来ない等とは限りませんのに」

生きる理由と言うものがなんでも良いのであれば、世間もそこまで他人の生きる理由や目標等を気にするものでは無い。いや世間であれ他者であれ、口出しする資格はそもそもないのだが。それ以上に周りに流されるという事の方が場合によっては問題になるのではないのだろうか?
icon
「周りに流されるのも自身が見えなくなる原因の一つではないかと。他者は他者として、切り離して考える事も時には必要かと思われます」

他者の生きる理由がどれだけ志が強かろうと、それはそれだ。自らがそれに合わせることもする必要は無いし、流される必要もない。
必要なのは自らを見失わない事では無いのだろうか?
icon
「別にこの場合、私の回答は意味を成さないものなのではないかと思っております。私の生きる意味が貴方に何の価値も解決も与える程、素晴らしいものでは無いと思いますので…。第一、人間はそんなに簡単に動くと思えませんし」

他者の生きる意味から、何かを得るとは男は到底思っていない様だ。そこから似たような理由にした所でそれは他者の"模倣"だと解釈しているのだろう。
ましてやそれを聞いたからと言って人間全てがそう簡単に動く訳が無い。例えそこから理由探しに動いたとしても、その程度の動機なのであれば明確な理由ではないのだろうかと感じる。
考えを張り巡らせた結果、他者と似た考えになってしまったという考えと、初めから他者の考えを模倣すると考えるのとでは明らかな"差"があると言う事を感じているのだろう。