Chapter02-05

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
Answer
質問者の回答の口ぶりから、大人は筋の通った理由を子供にまともに話さない無責任さを持っている様に感じられる。しかしその反面道理で人間は基本的に子供に政治を任せない訳だ、と納得してしまう。
所で当然の如く、ここでもひとつ疑問点が存在した。
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「貴方は間違いが存在しないとは仰っておりましたが……そうなるとこの問い掛けに違和感を感じますね。正しさの次にくる問い掛けが悪い事とは……?正しいは間違いと、悪は善と対になっていると思っていたのですが」

とはいえ、質問者は対となる様に問い掛けをしたのではないのだろうが。そうなるとまるで正義と悪を対となる存在としているようにも感じられる。
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「一つ言えるのは、貴方と貴方の行動を止めようとする大人を始めとした人間、そして国と言うものは、確かに悪いかもしれませんね……相性が」

男が珍しく質問者の話の中の大人の事を悪い、と確かに認めている様だ。しかしそれは質問者を止める行為自体では微塵も無く、質問者である少年とその大人達との相性の話なのであるが。正直質問者と大人達と言うよりも彼と彼の在住する国、もしくはその国の統治者との相性が悪いと言った方が正確なのかもしれない。
肯定すると見せかけておいてこれである。彼の性根の悪さがここでも発揮されようとは。
はっきり言って質問者の問い掛けの内容、いや問い掛けそのものに対して主観しか感じられない。大人へ対しての印象があれである以上、失言は許されない。無闇に回答してしまえば責任が伴うのではないだろうか?
だからこそ、男は模今回も範的な回答を用意したのだろう。
それはいつもの如く、男が一呼吸置いた後だった。わざとらしい穏やかな表情も当然付いている。
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「……一般的に悪といえば秩序を乱す輩、反骨する者、差別主義者、人の命を奪う者等が挙げられます。それを世間一般では"犯罪者"と扱っています。
物語で例えるのならば……主人公達に悪意、敵意、害意を持つ存在として立ちはだかる存在の事を"悪"と称します。それに打ち勝つ主人公達を美しく見せるために為に悪の行動は極めて苛烈なものとなる事は多い様ですね」

極めて教科書の様な綺麗事だ。男の住む世界そのものやその世界では有名になる物語の中ではそうなのだろう。
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「……さて、綺麗事はここまでにしておきましょう。私もこんな戯言を回答として使用するのに、何の意味があるのか未だに分かりませんので」

これもまた、いつもの回答の時の様なものである。穏やかな表情を消し去り、冷たい目のまま別の回答を挙げる。
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「これも正しさと同じです。善悪、正しさ間違いは人間に強要するものでは無ければ無理に同意を求めてもいけないものでしょう。それはきっと、主観でしか判断出来ないですから」

主観でしかないものを他者に強要、無理な同意を求めて人間は本当に満足なのだろうか?いや、それさえも感じさせぬ様に、考えさせぬ様に自らの知恵を使い"支配""洗脳"と言うものをして来たのだろう。ならばそれをする側の人間にとっては"満足"となるのかもしれない。