Chapter02-04

記録者: Visitor (ENo. 31)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-14 04:00:00

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風が通り抜けるような軽い笑い声は相槌のように。
ずっとにこやかに話を聞いている少年は、納得したみたいに数度頷いた後。

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「うんうん!じゃあ次は……ちょっと似たような質問なんだけどさ」

明るさはそのまま、けれど瞳の奥に──ほんの少しだけ鋭さが宿る。

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「君は自分が“正しい”と──思ってる?」

問いかけるトーン自体は軽い。
けれど、その笑顔の裏側から何かが覗く。
あなたの返答を待つ足は楽しげにぶらぶら揺れているのに、
視線だけは、明確に「答え」を探している。

子供の遊びのリズムの中に、
ほんの少しの、刃のような期待。

──あなたは自らを“正しい”と言えますか?

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「僕はさっき言った通り!
 自分の事を正しいと思うから、自分がみんなに聞かせている音が正しいと思っているから、
 僕は笛を吹くし、みんなを導くんだ。だってそうでしょ?」

軽やかに笑いながら、しかし言葉には確信がある。

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「ずっと働かなきゃいけない閉鎖的な村も、
 つまみ食いしたら一日ご飯をもらえないのも、
 重い税金も、いじわるなおばあさんも、変わらせてくれない。
 間違ってるから──導いてあげなきゃいけないでしょ?」


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「自分が正しいって信じてる人はね、迷わずに進めるんだ。
 曲が途切れないんだよ。ほら、楽譜って止まるとそこで“死んじゃう”からさ」

どこまでも明るい声で、
どこまでもまっすぐに、
少年は“正しさ”を語っていた。
──それで、あなたの答えを待っている。
Answer
正しさと言うものは何か、の次は自らが正しいと思っているのか、と来た。しかし男にとってはこの問い掛けよりもこの質問者の目的が何なのか、の疑問が渦巻いていた。以前出会った質問者は"観測"と確かに目的を言っており、それが理由でもあるのだろうと解釈をする事が出来た。
ところが今回の少年はその理由を何一つ言っていないのでは無いだろうか?もしくはそれが不明瞭ではないか?こうなればいくら見た感じでは子供の姿だとしても、警戒を怠る事は出来ない。
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「……何も言いませんよ。これも易々と口にするものではない。問を変えれば私がお答えするとお思いで?そうであれば、その手には乗りませんよ」

当然と言ったところか、男は簡単には回答してくれない様だ。今までのこの手の回答も、あまり彼の本心とは言い難いものであったのだ。そんな男が簡単に自らの意思としての回答を見せるとは思えない。
しかし、この問い掛けに対しある事を思い出した様で回答を続ける。
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「あぁ、ですがこれは……回答した様なものなのかもしれませんね。私は確かに言いましたよ。それが回答と言うものでは無いのでしょうか?その辺の解釈はご勝手に」

男はそう言うが、自らの意思での回答と言えるものなのだろうか?他者……ここで言う質問者に委ねた様なものでは無いかとも感じる。少なくともはっきりと"自身を正しい"と男が回答したのを確認する事は出来てはいないだろう。
少なくとも言える事は、この男の"正しさ"と言うものは生半可なものでは確かめる事は不可能なのかもしれない。
最後に、男にとっての最大の疑問が投げかけられる。質問者は目の前にいる少年なのだから、彼の様な子供がこれに対しての明確な理由を到底出せるとは思い難いのだが……聞かずにはいられなかった。
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「一つお聞きしたいのですが……あなたは先程間違いは無いと思っていると仰っていましたが、今挙げたもの達が間違っているから導いてあげなければいけない……とは?先程の回答と比較して矛盾が生じているように見えるのですが、あれは貴方自身の信じているものだけを指して、正しいと思っていただけだと言うのですか?」

質問者は先程確かにそう言っていたにも関わらず、今回彼が挙げたものが間違いだと言うのならば……少なくとも少年は確かにそれらを"間違っているから"と言っていた。それでは間違いが無いのでは無く、少年自身の思想、価値観が間違っていない正しい存在だと自らが思っているだけではないのか?そうだとしても、"間違いは無いと思う"の発言は男にとって理解出来ないものだろう。
どの道、実に"人間というものは都合が良い"と感じさせる問い掛けである様に感じられた。