余話【大賢者の世界語り】 | 記録詳細

余話【大賢者の世界語り】

記録者: アルンケティル (ENo. 16)
公開日: 2025-10-26

【ラギの遺物】

 天魔大戦で、邪神ラギの遺した呪われし物品。
 特定の品という訳ではなく、
 様々な形状、状態になって、
 世界各地に散らばっている。

 この遺物に触れ、遺物と共に過ごすと、
 少しずつ精神が狂っていくようだ。
 されどこの遺物は代わりのように、
 所持者に強い力を与える物でもある。

 これを破壊出来るのは、
 強い光の力を持つ存在だけ。
 生半な力では狂気に呑まれる。

「天魔大戦で英雄アリシアは
 邪神ラギに勝ちこそしたけれど…………
 ラギはとんでもない傷痕を遺してったのさ」

「僕の光女神の力なら破壊出来るけどさ…………
 見つけ次第、破壊しているけどさ…………。
 全ての場所を把握なんてしていないし」

「ラギの怨嗟、ここに極まれり、ってね。
 そこまでして世界を呪いたかったんだろうな」

「…………気持ちは分からないでもないが」

  ◇

【闇神ヴァイルハイネン】

 世界“アンダルシア”で、
 『人間好きな闇神さま』として知られる神。
 初期に冥王によって生み出された、
 最古の神の一角でもあり格が高い。

 気に入った人間に特別な力を与え、
 その一生に寄り添うという特性を持つ。
 また、任意で世界渡りをする力もある為、
 『異界の渡し守』という異名もある。

 眷属は赤眼の鴉。
 古王国時代には、この闇神を
 国単位で信仰していたところも
 あったらしい…………。

 人の姿に紛れる時は黒髪赤眼の姿を取り、
 『闇魔導士ハイン』を名乗ることが多いようだ。

「『赤眼の鴉は奇跡の証。
 人間好きな闇神さまの、お通りだ…………』」

「そんな歌が、僕の世界にはあるよ」

「僕は神様連中のこと、
 あまり好きじゃないけど!
 アイツのことはまぁ……嫌いじゃないよ」

「…………アイツが居なかったら僕、
 ずっと名無しのまんまだったかも知れないし、ね」

  ◇

【“運命の女神の加護のあらんことを”】

 世界“アンダルシア”の祈りの文句。
 別れの時や相手の幸いを願う時に
 告げられることが多い。

 この世界の運命神は2人いる。
 双子の姉、天秤の秤ファーテと、
 双子の弟、天秤の錘フォルトゥーン。

 ファーテは安定した運命を、
 フォルトゥーンはリスクもリターンも大きい運命を、
 それぞれ司っている。

 ファーテの信仰は幅広くあり、
 フォルトゥーンの信仰は
 ギャンブラー等に多いようだ。

「“運命の神”と言ったら、
 一般的にはファーテを指すことが多いよ」

「フォルトゥーンは数年前に封じられたけど……
 これは世間には秘しておくよ。
 信仰って大事だもの」

「運命ってさ、時に非常に残酷だけど。
 神に願って縋るから、
 人は心の安寧を手に入れられるんだ」

  ◇

【黄昏の主】

 世界“アンダルシア”の死の神。
 万物が行き着く果ての果て。
 神ですら逃れることの出来ない終焉。
 この世界の“死”は、黄昏色をしているという。

 姿も声も一切が不明。
 彼に従う他の死神たちも、
 主のことは黙して語らぬ。

 運命によって死を約束されたのに
 未だ死なない人間たちに対し、
 下位の死神たちを派遣している。

 この世界の者は、死が近付くことを
 『黄昏の主の足音がする』と表現することがある。
 実際、死を予期した者は、
 そのような音を聞くのだとか。

「…………まぁ、僕とは無縁の神だよ。
 僕に黄昏が訪れる時は、
 この世界が終わる時だけだしね」

「僕にその足音は聞こえない。
 絶対に、絶対に」

「ま、今はもう暮れてやるつもりもないけど!
 ね、サンセール!」

 君が隣に在る限り!

  ◇

【神憑き】

 “アンダルシア”の世界法則のひとつ。

 『人の域を超えた力を持ったまま
 10歳を迎えた人間は、
 20歳になる前に必ず、
 何らかの原因で死亡する』というもの。

 10歳以前に力が消えた者はこれに該当しない。
 これに該当する者は
 圧倒的な力と英雄性が約束されるが、
 短命も確定する。

 魔導王国建国の英雄グランは、
 この“神憑き”だったらしい。

 神に憑かれた人間は、英雄となる。
 しかし英雄の全てが神憑きとは限らない。
 神に憑かれずとも華々しい活躍をする人間は、
 世界各地に点在している。
 そして彼らは寿命の制限なんてない。

「……なら、儚い命の“神憑き”は、
 何なんだよって話…………」

「英雄なんかにはなりたくないと
 幾ら当人が思っても…………
 “神憑き”になれば
 運命はもう確定しているのさ」

「──こんなのは祝福なんかじゃない。
 呪いだよ」