戦争の世界 | 記録詳細

戦争の世界

記録者: レディ・ハグ (ENo. 64)
公開日: 2025-10-13

魔女は浮かぶ。風に揺られて。パラソルが畝雲を割く。



灰色の空。雷鳴のごとき轟音が、時折響く。
煤色の地上。あちこちで炎がくすぶり、煙は様相を隠す。



前から、何かの群れが来る。

―――――Vの字に飛ぶ渡鳥



「………っ……違う!!」



魔女はパラソルに風を送り、高度を上げる。
まだ世界転移をしたばかりで満足に魔法を使えない。


―――――5機のプロペラ機の編隊は魔女の姿を捉え、機関銃を打ち込む。
上空の風を読みながらヒラヒラと避ける魔女の横を、銃弾と、遅れて音が掠めていく。


―――――1機が魔女の方へ直接突っ込んでくる。
気付いた魔女は身体を下方向へねじ込んで、固めた空気を蹴って地上へ跳ぶ。
硬いままの空気にプロペラ機は突っ込み、爆散した。




――――執拗に襲い掛かってくる。
他の世界の飛行機では無かったことだ。
1機撃墜した時点で逃げていくはず。



―――ドゴオォォォォォォ…



風を捉えなおした魔女の後ろで鈍い音がした。
魔女を狙った銃撃に、他の機体が巻き込まれている。

何かがおかしい。
機体同士互いに気を遣う様子がない。
魔女を常に狙い、殲滅だけを考えて動




―ズガアァァァァァァァァァ!!!

「きゃあぁぁっ!!!」

魔女の近くで2機が潰れる。
衝撃で魔女は体のバランスを崩し、破片が足を掠めて血が空へ昇っていく。
少しずれていたら、足を失っていたところだった。




―最後の1機が魔女に狙いを定める。




魔女を狙う、ただその一点しか考えないプロペラ機の群れに魔女は恐れをなした。

もう空気を固める魔法を使う力もない。
一度浮かぶのが精いっぱいであることを感覚で分かっている。


プロペラ機の妄執から逃れる術は一つしかなかった。


魔女はパラソルを閉じ、頭を地上へ向け、目を閉じ数を数える…










「3」











「2」












「1」











「ここ!」

魔女はパラソルを開く。



















急に浮かび上がった魔女の下を







―プロペラ機がすり抜け









































地面に帰した。