万年紀【3.古代文明に夢を見た】 | 記録詳細

万年紀【3.古代文明に夢を見た】

記録者: アルンケティル (ENo. 16)
公開日: 2025-10-13

【3.古代文明に夢を見た】

 古魔導時代、世界はひとつだった。
 巨大な大陸があって、
 その中で地域が分かれていて。

 原初の魔法の国エルテハイムは
 その西方に位置していた。
 そしてエルテハイムが生まれて数十年後、
 超大陸の東方で急な技術革命が起きた。
 そしてひとつ、新たな国が誕生したのだ。

「機械帝国アルティリッツ。
 魔法を退け、機械の力だけで
 世界を獲ろうとした国だ」

「穏やかなエルテハイムの民とは違い、
 彼らは活動的で、他者の権利侵害も厭わない」

「そして次第にエルテハイムの民を
 “魔女”と呼ぶようになって、
 争いが生まれ始めたのさ」

 そんなある時期、超大陸の中央で、
 魔法と機械を融合させた“魔科学”が生まれた。
 魔科学を扱う者たちは中央に新たな国を作り上げた。
 それこそが──

「中央国家フオルヴェン。
 後に“古代文明”と呼ばれることになる
 この時代の、要の国だねぇ」

 魔科学もフオルヴェンも大いに栄え、
 非常に発展した文明へと成長した。
 黎明期、世界は天界にまで
 繋がりそうな気がしていた。

「僕は“観測者”として一般人やってたから、
 魔科学の詳しいこととか知らないし、
 だから魔科学の再現も出来ないけどさ」

「…………とんでもない時代だった、な」

 今はもう無き、遠い遠い時代。
 あの頃はさ、生態系も違っていたんだよ。

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 古代文明は千年以上の繁栄を謳歌する。
 しかしある時、“予言”がされた。


──雷を操る子供を警戒せよ。
──その子供、いつか
 世界を滅ぼす可能性を持つ者なり。



 予言の子の名はラヴィラン・トライヴァル。
 その予言を信じた周りは、
 世界の滅びを恐れてラヴィランを殺そうとした。

 そんなラヴィランとその仲間たちは、
 予言を覆す為に長い長い旅をすることになる。

「…………僕はラヴィランを邪魔しようとした」

「だって世界が滅びてくれたなら、
 僕のこの“永遠”も終わるじゃないか」

「…………まぁ結局、何もしなかったけど」

 冒険の果てにラヴィランたちは、
 隠された予言の真実に気付き、
 世界の破滅を食い止める“音”を奏でた。
 それによって最悪の事態にはならなかったが、
 どの道、災厄は訪れて。


──堕ちてきた星、
 壊れゆく文明の史跡。



 ラヴィランたちは“その日”が来る前に
 地下の巨大シェルターに逃げ込んだけれど。
 死なぬケティルは地上に残って、
 文明の終わりを見届けた。

「“終わり”は、
 本当に本当に、綺麗だった」

 あれだけ栄えた魔科学文明は、
 墜ちてきた星に、大自然の力の前に、
 為す術もなく一瞬で崩壊した。


 このまま、世界も壊れてしまったら、
 どれだけ良かったろうか。



 もしも自分がラヴィランの邪魔をしていたら。
 そして破滅の予言が覆されなかったら。
 生き地獄のようなこの永遠も、きっと──。

「──あぁ、綺麗だな」

 古代文明に夢を見た。
 発展し過ぎた文明の、
 行き着く果てを知りたくなった。

 古代文明に夢を見た。
 破滅の予言、ラヴィランの冒険。
 訪れる終焉に、期待した。

 古代文明に、夢を────。


 星が流れる夜に流した涙は、誰にも知られることがなく。
 隕石に身を灼かれ砕かれる苦しみを味わいながら、
 神々の大釜アルンケティル”は、生きたまま全てを見届けたんだ。

 阿鼻叫喚。ほとんどの人間は地下へ。これが終末。
 だけど終わらない、終われない。
 覆された予言は、ひとすじの希望となりて。

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 地形も生態系も、大いに変わってしまった。
 世界はまた いちから、やり直しだ。