魔女は浮かぶ。風に揺られて。パラソルが綿雲を割く。
眼下、地上には花、花、花。
アスファルトとコンクリートの街に花、花、花。
一面の花畑。苔のようにすべてを花が包んでいる。
湖の青はもはや見えず。海に目を向ければ茶色く濁った花筏。
山は様々な色に食い尽くされ、山頂の雪も許されない。
地上からは甘い香りが立ちのぼる。
しかし、花々の襟を正してまわる蜂も、キスしていく蝶もいない。
空に舞い上がるものは、数多の花弁とキラキラと金粉のようにきらめく花粉だけ。
魔女に向かって、花びらの風が地上から手を伸ばす。
「ふん。」
「けほ、けほ……なんですの、この香り。甘すぎて腐臭のようですわね。」
滅んでいる世界に興味はないと、魔女は次へ行くための強い魔力の場所を探す。
美しい華畑の下には、おびただしい数の肉塊で埋め尽くされていた。