
ラナンキュラス
『………………』

ラナンキュラス
『……ノイ』

ラナンキュラス
『――何故、ここを訪れましたの?』

ノイ
『キュウケイするため』

ノイ
『――で、ナットクするおカタではないのはわかっているとも』

ノイ
『……なんであろうな。なんとなく、だ。なんとなく、アルジにアえるキがしたのだ』

ラナンキュラス
『……また随分と、ふんわりした理由にございますのね』

ノイ
『だがジジツ、こうしてまたアえた。それでジュウブンではないか?』

ラナンキュラス
『こうして再び出会って……それで? どうするおつもりですか? わたくしに恨み言でもぶつけるおつもりでしょうか? それとも――憎悪のままにころすおつもりで?』

ノイ
『ナニをイいなさるか、ワがアルジよ。むしろまた、もうイチドだけでヨいから、こうしてゆっくりハナしアいたいとオモっていたのだぞ?』

ラナンキュラス
『…………』

ノイ
『アルジはあのヒ、ヒトリだったワレをミつけ、ヒロいアげ、ノイというナまでツけてくれた。そして、トウソツするモノに、ダイマオウにしてくれた。……ここまでカワイがってもらえて、イッタイナニをウラみ、ニクもうというのだ?』

ラナンキュラス
『……そのボロボロの身体が全てではなくて? ええそうです、わたくしは勝手にあなたに期待して、わたくしが手を出さずとも纏め上げられると信じて、そしてできなかったのを見届けて、勝手に裏切られた気分になって、失望いたしましたわ』

ノイ
『……、そうだな。それはヒトエに、ワレのチカラブソクによるものだ。キタイにコタえられず、すまなかったな』

ラナンキュラス
『――違いましてよ』

ノイ
『……?』

ラナンキュラス
『最初から、わたくしが統率すれば良かっただけの話ですわ。渾沌勢力は、崇拝対象の言葉には耳を傾けていらしたので。それを怠ったのは、紛れもない事実ですの』

ノイ
『……アルジ?』

ラナンキュラス
『全てがわたくしと同じような存在であったなら。或いは一人でも、あなたの言葉に耳を傾ける者がいらしたなら。あなたは、これほどまでに酷い目に遭わなかったはずでしてよ。それをわたくしは、あなたがひと繋ぎの架け橋に倒されるその時まで、見て見ぬふりをいたしましたの』

ノイ
『……』

ラナンキュラス
『……あなたが辺境の村の人間たちから学びを得たように、わたくしもここで、ほんの少しだけですが学びを得ました。これでは敗北を喫して当然ですわね』

ノイ
『……ラナンキュラスさま』

ラナンキュラス
『……?』

ノイ
『――カワわったな』

ラナンキュラス
『……、先に変わったのはあなたの方でしょう?』

ノイ
『そうか。……どうだ? ジツにヒサしぶりだが、こうしてハナしアうのもやはりワルくないだろう?』

ラナンキュラス
『元の世界に戻ってしまったら、またお話しできなくなりますものね』

ノイ
『うむ、だが、これからのワレはよりヨくなるぞ? ナニせ、カノウセイをシってしまったからな。きっといつか、またおハナしができるかもしれぬというカノウセイをな』

ラナンキュラス
『それは、期待してよろしくて?』

ノイ
『ムロンだ。ワがナはノイ、かつてはダイマオウにして、イマはアラヘビガミであり、――そして、ラナンキュラスさま、アルジのただイッピキのペットであるからな!』

ラナンキュラス
『ええ、ええ、――ノイ、あなたはわたくしの大切な愛玩動物にございますわ』

ノイ
『……! ……はは、そのおコトバがキけるとはオモわなかったぞ!』
――此度の喫茶店、とても楽しゅうございましたわ。
またどこかでお会いしましょうね。
【Fin.】