Chapter03-01

記録者: 薄場心檻 (ENo. 146)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

またあの部屋に来たようだ。
小さな部屋には相変わらず椅子は一つきり。
壁を向いた椅子の先には、やはり何も見えない。

──あなたが椅子に座れば、
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。
三角に身体を縮めて座っていた
長い髪を気だるげに結んだ白い服の女が、
あなたに気付いた様子で緩慢に顔を上げた。

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「……えー……なんか居るんだけど。どゆこと?」

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「あー……まあ……ども。
 名前とか……あー…じゃあ、シロでいいや、この部屋白いし。
 君は……じゃあクロ。なんかぼんやりしてるし」

知らないもの同士、名前を名乗るモンでもないでしょうと。
シロを名乗った女は畳んだ身体をほどいて、
んん、と小さな声を漏らしながら伸ばす。

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「……こーいうのって、なんかあったよね。
 白い部屋に閉じ込められて……なんか……出られない部屋的な?
 初対面でこんなんされてもおもんねー……」

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「なんかこの白さ落ち着かねー……、
 内側をざわざわ触られてるみたいなー……。
 なんでこんなとこにウチら集められたんだろ。おもろい話なんてできねーっつの……」

嘆息ひとつ零した後、
白い部屋の隅の方に目を遣って、女はぼやく。

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「まー……夢ん中……なんかな。何話してもいいっちゃいいのか。
 クロだってウチの無意識が作った偶像みてーなもんかもだし……
 返事返って来るかもわかんねーし、適当こくか」

女は髪を束ねているリボンをいじる。
それは落ち着かない子どものようであり、退屈を紛らわせる大人の仕草にも見えた。

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「クロはさ、生きる理由とかって何だと思う?


──あなたには生きる理由はありますか?

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「別に生まれた時点で生きる理由とか要らね―とは思うけど、
 あった方がちょっと嬉しいというか、豊かな気がするんだよね。
 親が望んだから生まれた、以外の意味があった方が……なんかいいじゃん?」

言いながら、女はリボンをきゅっと締め直す。
その指先だけは、妙に確かだった。

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「生きる理由ってより人生の目的……って言う方が正しいのかも。
 小さい時からなんか、皆と一緒に~とか、大人の言う事を聞け~とかで
 結局どう生きたいかって全然分かんないなーってさ?

 ガチガチに矯正したくせに、急に「自分のやりたい事をやれ」って放り出されて、
 なんかそのまま今になっちゃった、みたいなさ……」

あなたをじっと覗き込む。
その視線は、答えを求めているようで、ただ誰かと共有したいだけのようでもあった。

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「クロはそういうのあんの?
 ウチも生きる理由っての──拾えるもんなら拾いたいんだよね。……皆目的に向かって歩いてるのに、
 ウチ一人だけ足を止めてる気がして、怖いからさ」

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すっかり見慣れた白い部屋に肩をすくめて笑い、迷わずイスに腰掛けた。
現れたシロと名乗る女性にひらひらと手を振って見せる。

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「どうも~。ってなんかテキトーだな。まぁいいや。うちがクロであなたがシロね。よろしく~」

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「まぁ、でもこんなところに放り込まれて初対面同士で困る、ってのは同感~。うんうん、テキトーにやってこ~」

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「って、生きる理由? なんか話題重くない? まぁ、いいけど」

問いかけの内容に目を丸くしたが、肩を竦めると顎をつまんで考え始めるだろう。

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「確かに、あったほうがなんかいいよね。でも、なくても生きてちゃいけないわけじゃないじゃん? じゃあ無くてもよくない?」

そう言って意地悪く口角を釣り上げ、しかしふと首を横に振る。

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「んー……いや、それじゃちょっとつまんないか。考えるのめんどくさいと思ったけど、ただダラダラ生きてるだけって多分つまんないね」

ふっと息を抜くように微笑んでもう一度考え始める。

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「うちが生きたいと思う理由。死にたくない理由。」

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「……街ちゃんとお母さんと一緒に居たいから生きていたい、かなぁ。家族と一緒にいたいから生きたい、かも」

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「全然他にやりたいこと、今は思いつかないや」

そう言って、少し照れたように笑うだろう。
胸の内では少し、おかしいかもしれない、なんて呟きながら。