フェルヴァリオの言葉に黙って頷きながら、
思考を深めるように髪を弄る手の動きは止まっていた。

「価値、偉そうな言葉を使ったけどさ」
少し顔をゆがめ、眉間に皺を寄せる。

「結局、自分がその生き方で満足できるかどうか、
みたいな話、な気もしてくるね」
視線をフェルヴァリオに向けて、問いを重ねる。

「どうすれば、満足って思えるんだろうね」

「もうこれでいいって思える瞬間……、
クロは、経験ある?……どうすれば自分が満足できるかって、分かる?」
フェルヴァリオは取り出したフラスコをじっと見つめながら、少し考える仕草を見せる。
そして、ゆるく肩をすくめて、ぽつりと答える。

「満足……と思える瞬間は、たくさんあるね」
口角にわずかに笑みを浮かべる。

「依頼者があとから追加でお金を渡してくれた時。
フラスコの中の液体が、変わった時。
鼻歌混じりで歌ってる時……とか。」
手をぐるりと振りながら、言葉の端々に楽しさが滲む。

「そりゃ、たくさんあるよ。
どれも小さくて、でも確かに “オレが動いた証拠” みたいな瞬間」
シロはそれを静かに聞き、膝を抱えたままわずかに笑った。

「……“満足”って多分、別にゴールじゃないんだよね」
フェルヴァリオはにやりと肩をすくめる。

「まあ、幻想とかじゃなくてさ。
目の前のこと、ちゃんとできた瞬間が一番嬉しいんだよ」
その言葉には、竜としての力や錬金術の知識だけじゃなく、
“生きている実感”も含まれていた。