感情の色が消える。表情が剥がれ落ちてしまって、髪を撫でる退屈も靴底を鳴らす不満もない。
動作を停止した人形が美しい所作で椅子に腰を掛けている。

「ない。どうしたら得られるのかも分からない。」
その声はシステムエラーを告げる機会音声のよう。
想定されていないトイカケに答える解を見失ってしまって人形は押し黙る。
沈黙は永遠。擬態の為の呼吸を真似た収縮すらない。
瞬きもない。瞬間に色を弔ってしまった水晶が見開かれている。
歪んだ紅の奥で何かが揺れている。人形の奥底に眠っていた閉じ込められた不安が漏れ出す。

「だって…だって…満足をしたら終わってしまうじゃない。私は終わりたくない。私は永遠になれる筈なのよ。」