シロは膝を抱えたまま、
少しだけ体を揺らしながら、ぽつりと言った。

「……あのさ。
誰かのために生きるって、なんか難しいと思わない?」

「ウチ、そんな器用じゃないし。
似合う自分のサイズ、毎回ぴったりじゃないんだよね。」
言葉に含まれるのは、あきらめと照れの混ざった軽さだけど、
その響きはフェルヴァリオの胸に妙に刺さった。
さらに静かに視線を合わせる。

「クロ、自分の価値って、どこに置いてる?
他人をどれだけ、自分の価値に使っている?」
その問いにフェルヴァリオは眉をひそめ、手元の依頼書を握りしめる。

「……なんだ、それ?どういうこと……?」
答えに窮しつつも、口から出たのはいつもの仕事目線。

「この宝石の透明度、詐欺してませんか?
とかそういう口コミを信用するかどうかってこと?」

「やだなぁ、自分の作った調合品にケチ付けられるのは」
でもすぐに、誇らしげに胸を張る。

「でも、オレが作ったものは一通り監査受けてるし……」
手元の依頼書を広げ、金の天秤を置き、賢者の石を見せる。

「……あっ、あとこれも」
その一連の道具を、フェルヴァリオは視線で示す。

「わかる人間にはわかるし、わからない人間にはわからない」

「一応、ちゃんと人間基準の審美眼は認めてもらってるよ」
フェルヴァリオは肩をすくめ、
少し照れくさそうに、でも確信をもって言った。

「だから、オレは、誰かに期待されることは嫌じゃないんだ。
だけど……それに縛られるのは、疲れるだけ」