ある遠い、遠い世界のお話
ある小さな村。
とある言い伝えがありました。
……とはいえ
それを信じていた人は、誰もいませんでしたから
信じる人がいない物語は
語り草を枯らしてしまうものですから
語られて来たその物語を
語る物は、者は、ものは、居ません。
……たった一人を除いて
村のハズレ、森の近く。
暗い赤髪をした、少█
少女は語ります。
語りました
誰も信じないその言い伝えを
たった一人、静かに
語りました
語っていました
誰も信じない
──赤い蛇の話を
誰にも聞かれなくとも
語っていました
【赤い蛇】
「言ったでしょう。
誰も信じていないって」
「なら、覚えている人もいないのですから。
語ることは何もありませんね」