Chapter02-03

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

クリックで開閉
奇抜な色の羽織をひらりひら。
あなたの言葉を頷きながら聴いて、なるほど!なんて相槌を入れた。
少年にとってあなたの言葉は新鮮な音列なのだろう。
ありがとう!なんて言葉は程々に。また次のトイカケがあなたに振られた。

icon
「ねえねえ、君に訊きたいんだ。
 僕ってさ──いつも思うんだ。“正しいこと”って何なんだろうって?」

少年は笛を軽く指先でくるくる回し、空気に音の波を描くようにして言う。

icon
「だってさ、僕が吹く笛が誰かを笑顔にしたとき、
 それは“正しいこと”な感じがするでしょ?
 でも、もし誰かが嫌な気持ちになったら……それは“間違い”になるのかな?」


icon
「ね、君は──“正しい”ってなんだと思う?


──あなたは、何をもって“正しい”と判断しますか?

sample
icon
「僕はさ、間違いなんてないと思うんだ。
 高い音も低い音も、速いテンポも遅いテンポも、全部必要で、
 楽しさも悲しさもぜーんぶ、大事なものなんだ!
 だから全部正しいって言えるんじゃないかなって」

見えない舞台の上で踊るように広げた両手。
世界のあらゆる感情を抱きしめるかのように、無邪気で貪欲だ。

icon
「たとえ誰かが“間違い”って言っても、
 そのせいで誰かが笑ったり泣いたり、変わるなら、
 それは正しいことになるんだ!」

少しだけ、笛の端がきらりと光った気がした。
正しさは、正解ではなく──変化そのものなのだと、少年は信じている。

少年は笛を胸に抱き、満足げに微笑んだ。

icon
「僕は“自分が正しい”と信じてる。だから誰かに間違ってると言われても気にならない!

 君はどう?周りの音は気にしちゃうタイプかな?
 それとも、君も自分の旋律を持っているのかな?
 ──君にとって“正しい”て何?」

Answer
icon
「“正しい”…………」

 踊る笛を見ながら、黙考。

 思い返すのは、前のこと。
 とある人物と理想のぶつかり合いをした。
 その果てに己が勝って、得たものは。

icon
「“正しい”は、
 地域や環境によって異なるものだ。
 世の中には、
 絶対的な“正しい”なんて存在しない」

icon
「魔導王国では魔法が使えることこそ
 “正しい”とされるが…………。
 機械の栄えたアーチャド王国では、
 逆に魔法は悪とされるんだとよ」

icon
「だから私は答えよう。
 “正しい”とは──
 個々人でまるで変わる価値観だ
、と」

 人の数だけ“正しい”はあるのだと少年は語る。

 ふたつの理想がありました、と
 歌うような口調で言った。

icon
「どちらの理想を語る人も、
 己の“正しい”を信じて
 一歩も退きませんでした。
 ふたつの理想はやがて、
 激しくぶつかり合いました」

icon
「ふたりは決闘をし、勝った方の“正しい”が、
 “正しい”であるとして証明されました」

「この場合…………」

 これは、実話だ。
 そして己は、その“勝った方”である。

icon
「──負けた方のその理想は、
 “正しくなかった”のか?」

 私はそうは思わないねと首を振る。

 魔局長のあの理想もあの願いも、
 “間違っている”とは言いたくない。
 己の理想と対立しただけのそれを、
 “正しくない”とは両断出来ない。

icon
「負けた方の理想にも、
 ちゃんと筋が通っていた。
 ふたつの理想はそれぞれにとって、
 “正しい”と強く信じられるものだった」

icon
「どちらも“正しかった”んだよ。
 でもそれらが両立することは不可能だから、
 両者は決闘をし、
 勝った方の理想が正当化された」

icon
「…………ほら。
 “正しい”なんてそんなものさ
「何処にも絶対的な基準なんてない。
 それを測る物差しは、みんな違うのだから」

 異なる理想がぶつかり合えば、
 勝った方こそが世間的には“正しい”になるのだろうが。
 負けた方は負けた方で、
 己の“正しい”を信じて歩んでいた。

 そんな誰かの“正しい”を踏み潰して、
 それを礎にして、己は理想を叶えようとしている。

 これからもきっと、己の理想は誰かと対立する。
 そのたびに勝ち続けなければ、
 自分の“正しい”を証明し続けなければ、
 この革命は成せないのだろう。

icon
「だから……そうだね。
 人の数だけ“正しい”があるのだから。
 “間違い”はあくまでも、
 その人にとっての
 間違いに過ぎないのだろうよ」

icon
「その線引きをどこにするかは、
 その人次第だ」