
「“正しい”…………」
踊る笛を見ながら、黙考。
思い返すのは、前のこと。
とある人物と理想のぶつかり合いをした。
その果てに己が勝って、得たものは。

「“正しい”は、
地域や環境によって異なるものだ。
世の中には、
絶対的な“正しい”なんて存在しない」

「魔導王国では魔法が使えることこそ
“正しい”とされるが…………。
機械の栄えたアーチャド王国では、
逆に魔法は悪とされるんだとよ」

「だから私は答えよう。
“正しい”とは──
個々人でまるで変わる価値観だ、と」
人の数だけ“正しい”はあるのだと少年は語る。
ふたつの理想がありました、と
歌うような口調で言った。

「どちらの理想を語る人も、
己の“正しい”を信じて
一歩も退きませんでした。
ふたつの理想はやがて、
激しくぶつかり合いました」

「ふたりは決闘をし、勝った方の“正しい”が、
“正しい”であるとして証明されました」
「この場合…………」
これは、実話だ。
そして己は、その“勝った方”である。

「──負けた方のその理想は、
“正しくなかった”のか?」
私はそうは思わないねと首を振る。
魔局長のあの理想もあの願いも、
“間違っている”とは言いたくない。
己の理想と対立しただけのそれを、
“正しくない”とは両断出来ない。

「負けた方の理想にも、
ちゃんと筋が通っていた。
ふたつの理想はそれぞれにとって、
“正しい”と強く信じられるものだった」

「どちらも“正しかった”んだよ。
でもそれらが両立することは不可能だから、
両者は決闘をし、
勝った方の理想が正当化された」

「…………ほら。
“正しい”なんてそんなものさ」
「何処にも絶対的な基準なんてない。
それを測る物差しは、みんな違うのだから」
異なる理想がぶつかり合えば、
勝った方こそが世間的には“正しい”になるのだろうが。
負けた方は負けた方で、
己の“正しい”を信じて歩んでいた。
そんな誰かの“正しい”を踏み潰して、
それを礎にして、己は理想を叶えようとしている。
これからもきっと、己の理想は誰かと対立する。
そのたびに勝ち続けなければ、
自分の“正しい”を証明し続けなければ、
この革命は成せないのだろう。

「だから……そうだね。
人の数だけ“正しい”があるのだから。
“間違い”はあくまでも、
その人にとっての
間違いに過ぎないのだろうよ」

「その線引きをどこにするかは、
その人次第だ」