Chapter03-02

記録者: ダミアン・ガルーナ (ENo. 145)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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返事が返ってくれば、おー、なんて緩い声。
女は椅子の背もたれにだらりと寄りかかり、片手で髪を弄る。
視線だけはあなたに向いているが、どこか遠くを見つめるようでもあった。

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「ねぇクロ。その話で思ったんだけどさ……
 ……変わる事って、どうしてこんなに難しいんだろうね」

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「小さい頃はさ、色々なものに手を出せて、影響を貰えて、変わっていけて、
 でも今は……うーん、なんか、平行線というか……」

手の動きが、無意識に髪を絡める。
その髪の長さが、絡めた長さほど短かった頃を思い返すように。
“過去の自分”と今の自分を結ぶ糸を手繰っているかのように。

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「努力して変わろうと思っても、どうにも体が動かないっていうか。
 変われるかもって期待して、結局同じとこにいるっていうか……。

 踏み出したと思っても、そんな事は無くて、
 思い知らされる……というか、さ」

言葉に迷うような沈黙が一つ。
下に移動していた視線をあなたに持ち上げ直して、首を傾いだ。

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「クロはどう?
 変わろうって思うのに、……よくないと分かってるのに、
 どうしても変われないことってある?」


──あなたには“変われないもの”はありますか?

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「ウチさ、“変わる気がない”わけじゃないんだよね。
 むしろ、変わりたいとは思うんだよ。
 だって、このままじゃ嫌だし。退屈だし。……置いていかれそうだし」

口では軽く言いながらも、指先は神経質にリボンをつまむ。

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「でもさ、変わるって……“今の自分を捨てる”みたいな感じしない?
 少なくとも現状って友達もいて、安全で、飢えはしなくて、凍えもしないし、傷付きもしない……。
 変わって無くなるのって……ちょっとだけ怖いんだよね。
 無くならない保証なんてされてないし、さ」

彼女は笑う。
けれどそれは苦笑とも、呆けともつかない曖昧な笑みだ。

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「“変わりたい理由”と、“変わらないままでいたい理由”、
 つり合いがとれちゃってる、のかな。だから動けないのかも。
 ウチ、そこらへんでいつも足止め食らってんの、マジだる」


言いながら、女は足を組み替える。
動きたいのに動かない身体を、座り直して誤魔化しているように。

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「クロはどう?
 変われないものってある?
 それって、なんでだと思う?」

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返事が届いている様子に少し嬉しそうに笑むだろう。
続く問いかけはあまり理解できなかったのか首を傾げる。

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「変わるのが難しい…? うーん、変わりたいのに変われない…シロちゃんは変えたい自分があるんだね?」

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「俺言われて思ったのはさ、小さい頃って変わるの確かに変わるの簡単な気がするよ。なんつーか、元々何もないから色々試せるし、出来なかったことが出来るようになるし」

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「大人になると、それがゆっくりになる気がする。シロちゃんの言う通り、今の自分を捨てなきゃいけないっていうか、もう出来てることを一回やめなきゃいけないときがあるっていうか」

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「釣り合いが取れてるっていうのもそうで、シロちゃんにとってはきっと、変わりたいも大事だし、変わらないも大事なんでしょ? どっちも大事だからどっちも欲しくて動けなくなっちゃうのってすごく分かる気がする」

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「どっちも大事だから悩んじゃうし動けないんだよ、きっと。でもだから、いっぱい悩むしかないんじゃないかな。」