Chapter01-04

記録者: 不運な風来者 (ENo. 26)
Version: 1 | 確定日時: 2025-12-03 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
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「……譲れないもの、かぁ」

別に変なプライドとかはない。
自分の何かしらを自慢に思っているわけでも
傲慢に思うわけでも。
好きなものがあるだとか
そういうのも特に

人を殺さないだとか、そういうチンケな法律も特に
……思ってはない。

だって生き物って死ぬ物でしょう?
それが早くなっただけ
何が悪いのか。


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「……あるよ。
1個だけ」

だけど、一つだけ
この一つだけは

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「私の─過去─ それだけは誰にも譲れない」
「譲っちゃ、イケナイもの」


秘匿に秘匿を重ねたその過去は
彩るとして赤を差す。

それはなんの赤か。



部屋の中に
──シュロロと、ヘビのような音が鳴る