Chapter01-03

記録者: 回向 (ENo. 68)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-27 04:00:00

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  ──カシャ


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「記録しました。有難う御座います」

言葉と共にシャッターが下りる。
たとい先のあなたの言葉がどのようなモノであったとしても、
コレは変わらずこの言葉を吐いたのだろう。
どれだけ荒唐無稽な事を言おうと、無関係な事を言おうと、
静かで落ち着いた声は、波打つ事が無い。

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「観察対象、次の情報を取得します」

冷たいガラスのひとみが、あなたに次のトイカケを差し出した。

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「──次は簡単な思考実験を行います。
 あなたの目の前に一人の人物がいるとしましょう

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彼は明らかに困難な状況にあり、助けを求めています。
 しかし、助けるとあなた自身に損害が生じます


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──あなたはどう行動しますか?
 理由や、其れに至る思考回路を開示してください」


──あなたはこの仮定にどう回答をしますか?

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「当機には質問と観測以外の権限を持ち得ません。
 従って、この人物を助けることは不可能です」


何とも思考実験のし甲斐の無い回答ではある。
流石に此れでは回答例として参考にならないと思考したか、
継ぎ足す様に次の言葉が繰り出される。

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「この問いを考えるにあたって、あなたは複数の要素を考慮する事になるでしょう
 自らの能力、損得勘定、社会倫理、共感性、恐怖心、
 過去の経験、未来への予測、その他不確定要素……
 どの要素に重きを置き、判断するかを考えると良いでしょう」


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「思考の順序、葛藤、迷い──それらも重要な要素です。
 『まず相手の安全、次に自己の損害への憂慮・保身行為、最後に社会的評価』等の様に、
 優先順位及び時間軸での解釈の変遷は実に多様性に富むものでしょう」

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「また、其の人物が『何者であるか』も重要です。
 幼子であるのか、年長者であるのか、あるいは敵対する者か、見知らぬ存在か、親しい者か──
 立場や関係性によって、きっとあなたの判断基準は変化します。

 それらの場合でもまた、此の状況を考えてみてください」



Answer
「そりゃあ〜 目の前にいるんならもちろん助けるでしょ!
なんかやって出た結果の方が、自分で納得できるしな〜」

「……いや、話のキモが『損害』ってとこだってのはわかってるよ」
「損得勘定とかってどうしてるの? ってハナシだよな〜」

「だって助けるって、もともと助ける側がちょっぴり頑張りが求められるもんで……」

「庇って怪我をするだとか、嫌な奴だから助けるのに気分を悪くするとかじゃなくても。
ただ時間をそいつのために使うだけでも、時間は無くなるワケで……」

「えーっと、だから……その頑張りによって失われる何かがあるのは当然で……
それを許容できるか? って言われたら……イエスだな!」

「……まあ、預かり知らぬとこまではムリだけど」


「それに……さっき話しただろ?
俺ぁずいぶんと曖昧な自己なんでね」

「立ち振る舞いすら求められる認知で変わるんだ。
人を害すると多くの人間から求められれば、また違うだろうね〜」

「わたしは人にとって、善くありたいけどさ……」

「……あ、これは個人の意見ってことで。オフレコで頼むよ〜」





「あっいや ちょっと待って」

「人を助ける時に『自分が何か被害を受けた』と思ってないなら、
そもそも議題に沿ってない条件なのか……?」