Chapter01-02

記録者: 百合園 永夢 (ENo. 111)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「……」

あなたの回答を──若しくは無回答を聞き、
ソレは少しじっとあなたを見詰めていた。


  ──カシャ


それから、また先にあった音が一つ。
撮ったものを確認するような間の後、深々と頭が下がった。

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「観測結果が不明瞭です。
 当機からはあなたの言葉を完全に受け取る事は難しいようです」

どうも椅子の〝こちら側〟と〝あちら側〟では具合が違うようだ。
あなたの言を確実に受け取れているかは、あちらもこちらも分かり得ないだろう。

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「では観察対象、続けましょう」


されどコレにとっては断片でも構わないのか、きゅり、とまたレンズがあなたを向く。


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「環境データの取得。あなたの属する世界を説明してください」

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「あなたの世界では、“普通”とはどのような状態を指しますか?」


──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?


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「当機の世界にはこれと言って特徴があるとは考えられません」

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「当機は異世界に対する情報を持ちません。
 よって、何が特色であるかを判断するには情報が不足しています」

──基準や比較対象が無ければ、世界の比較とは難しいものだろう。
自らの世界に当たり前に存在しているものが、他の世界では存在しない可能性すらある。
自らの視野では存在しないものが、世界の中には存在している可能性だってある。

つまりは、この質問は不毛なものではある。
……比較対象が無い限りは。


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「──あなたに回答していただくためには、
 当機の世界を説明せねばなりません。
 よって当機は、平均的な一般家庭の生活環境についてご説明致します」


もしあなたが回答に窮しているのであれば、
オブザーバーの言うものを参考に、比較して述べると良いのだろう。

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「朝9時に出社する方は、平均して朝7:22に起床致します。
 家事仕事用の自立稼働人形が6時には稼働を開始しており、
 起床し着衣を着替えた後には朝食を摂取する事が可能となります。
 起床から出勤までには平均28分31秒の時間が経過しています」

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「出勤には電車やバス──公共の車両を利用する方、
 運搬用人形を利用する方ほか、徒歩で出勤する方など様々です」

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「……コンプライアンスに基づき、出勤後については
 当機から申し上げる事は出来かねます」


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「7日を一週間という単位にし、
 うちの4日が平日、うちの3日を休日と制定されております。
 居住する地は球体の惑星、衛星は現在1つ観測されております。
 衛星及び他の惑星の生活様式については当機のデータベースには御座いません」



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「……以上の内容は参考にする事は可能ですか?」



……とはいえ、此れをなぞらえる必要も無い。
あなたの自由に回答してよいだろう。

Answer
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ふむ……。

あくまでもこの問答という状況が大切であるというご様子。此方の答えがいかほどのものか、特に気にする様子もなく。

――まるで自動案内、言ってしまえば当たり障りのない反応。察するに、きっと私のようにここへ招かれた方も多いのではないでしょうか?
そうであれば、あのような対応も納得できます。この白きキャンバスに最初に塗る色は"描き手"によっても異なります。故に、あくまで此方の言葉を不明瞭と定義しておき、されども何事もなく問答を進める。

ふふ、名探偵みたいでしょう?残念ながら司法のお勉強はしていないのですよ。
さ、続けましょうか。

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普通の定義、ですか。なかなかに難しいことをおっしゃられる。
ですが、私の解る範囲でお答えいたしましょう。

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我らが世界の文明を形成する中心種族は、我々、人間と呼ばれる種族です。
時間の単位は……貴方ときっと同じですね。最小単位を秒とした、60秒を1分、60分を1時間、24時間を1日、365日を1年、100年を1世紀と定義されています。

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そして貴方と同様、7日を1週間とし、月火水木金土日という曜日という部類分けをしています。
居住地は"地球"と我々が呼んでいる球体。太陽という恒星を中心とした惑星の集まり『太陽系』を構成する惑星のうちのひとつ。さらに『月』という衛星も地球に付随しておりめす。

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あとはそうですね……全ての事象は『物理法則』と呼ばれる、物理的な法則に則って発生します。我々の呼吸、心臓の鼓動、声の反響や視界の認知まで、これらは全て解明され、定義されているものです。
――殆どは、ですけどね

最後の一言だけ、意味ありげに目を細めながら紡いだ。