Chapter02-05

記録者: "□□の□□"、其の道中 (ENo. 124)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「ねえ──じゃあさ」

ぱちん。
少年が指を鳴らす。
軽快なくせに、不思議と胸の奥をざらつかせる音がした。

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「“正しい”があるなら……“悪い”って、なんだと思う?

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「君の思う“悪さ”ってさ。どういう形をしてる?
 ……悪い人って、どうして悪い事をすると思う?」

その声は明るいのに、奥底に沈むものは冷たく澄んでいる。
冗談みたいな口ぶりなのに──その実、返答を逃す隙を与えないほど見つめていた。

──あなたは、何をもって“悪い”と判断しますか?


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「僕が新しい曲を吹こうとするとね、
 止めようとする人がいるんだ。すっごく真面目な顔してさ」

笛に指を当て、吹く真似をして。
けれども笛を通して音を出す事はしないで、
また手持ち無沙汰のように笛を手でいじる。

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「親も、偉そうな大人も、見回りの憲兵も、
 神様の言うことばっかり唱える聖職者もね。

 彼らはそれを“正しいこと”だって僕に言うんだよ。
 でもさ、僕の新しい音を止めるんだよ? それってさ──」

そうして。歌う様な声で嗤った。

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〝悪い〟ってことじゃない?

      ──だって僕の方が正しいのだから!

……少年はあなたを見ている。
Answer
──あなたは、何をもって"悪い"と判断しますか?



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「悪い人……悪さ、か……」

直ぐに思い浮かぶのは、大陸各地に蔓延る魔物の類。
嗚呼、彼等とも意思疎通が出来たら、苦労が減るだろうに。
せめて、棲み分けを徹底出来たら、互いに譲歩が出来たら良いのに。


其れは其れとして。

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「……正しさは、変化するものだろう、と。
 そう、だとすれば」

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悪さもまた、同じ様に変化するもの、なんだろう

直ぐに思い浮かんだ魔物達も、きっと。

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*****
「……其れこそ。
 君を嗜める者達が己が正しいと言い、君が彼等を悪だと思うのと、同じ」

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*****
正しさにも、悪にも。
 理由は有っても、優劣や貴賤は無いんじゃないかな

――嗚呼、だからか。

私が、己が正しいと思い過ぎて驕り高ぶってはいけないと考える、のは。
自分が、いのちが。
絶対的な"善きもの"では無いと――本能的に、知っていたからか。


だから。

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「……君の音を、楽譜を。
 君を否定するつもりは一切無い、けれど」

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*****
「時々で良い、少しの時間で良い。
 "どうして彼等は自分を止めようとするのか、其れが正しいと言うのか"
 ……考えて、あげて」

希わくは。
どうか、己の"正しさ"に、呑み込まれないで後戻り出来ない程に暴走してしまわないで欲しい――