Chapter02-01

記録者: 蒼懐の魔術師 カマル (ENo. 114)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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あなたがふと気が付けば、真っ白な部屋に居た。
そこには椅子がひとつ置いてあるだけで、他に何もない。

あなたが以前来たあの部屋と、まったく同じに見える。
壁に触れても感触は無く、すり抜ける事も出来なければ
もうひとつの椅子を見る事も叶わない。

──あなたが椅子に座れば、部屋は拡張されたように感じる。
視界の向こうに椅子があり、そこに誰かが座っている。

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「あれ?」

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「あはっ、すごい。君っていつの間に居たの?
 ちっとも気付かなかった!だってさっきまで誰も居なかった、
 君の音はひとつも聴こえて居なかった!きっと何かが君を導いたんだね」


奇抜な色彩を纏った少年が、にこやかに楽しげにあなたを見ている。
足をぶらぶらと揺らしながら、まるで軽やかな旋律そのもののようだった。
胸元に下げた横笛が、少年の小さな動きに合わせて微かに揺れ、
そのたび、金属が擦れ合う透明な響きが空気を震わせる。

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「ね、僕さ、訊いてみたい事があるんだけど、いい?
 きっとこれは風の導き、新しい楽章の予感!
 今まで聞いたことのない音に出会えそうな気がするんだ!」


少年はあなたに体を傾け、目を輝かせる。
質問を投げかける瞬間でさえ、ひとつの“旋律”を紡ぐように。

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「──君はさ、大人になるってどういうことだと思う?


──あなたは“大人”とは何だと思いますか?

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「僕はね、毎日新しい音を探してる。
 繰り返しばっかりの退屈な道ばっかり歩いてたら、その曲は死んじゃうでしょう?」

空中に弧を描くように指先を動かす。
まるで目に見えない五線譜に、音を刻むみたいに。

その仕草に合わせて、笛が揺れて微かに音を鳴らしたような気がする。
それが空耳なのかどうか、判断できない。

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「僕から見たら大人って、死んだ曲をずっと流してる人たちだ。
 一体何が楽しくてそんなことをしてるのか、僕には全然分かんない!

 君はどう思う?大人ってもしかして僕が知らないだけでもっと楽しいものなのかな?」

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気づいたら以前と同じ部屋にいた。だが少し違っているようだ。
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魔術師カマルは目の前の少年…のような存在を見た。
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この鮮やかな色合いの少年は本当に【少年】なのだろうか?

目の前の鮮やかな彼の質問にカマルはこう答えた。
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「大人になるっていうのは…色々失ってもまた子供時代に得ることのできなかった知識や経験が得られる」

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「……かなぁって思ってるぜ。子供時代が無いから憶測で言っちまってるけど」

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「ビアンコの街にも子供はちゃんといるぜ。みんな元気に遊んだりしてる」


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「大人って子供に戻りたい、か不老になりたいかだよなあ。あれ、それ言ったら子供は赤ちゃんに戻りたいとか言ったの聞いたことねえなー」

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「既存の音だったとしても聴く人によっては新しい音にもなりうるだろ?」


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「例えば僕が指パッチンをしたら、他人がやる指パッチンとは少し違うだろうしな!」

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実際に指を鳴らして見せた。

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「同じ曲でも演奏する人によって音もちょっとずつ違うんじゃないか?」

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「そんな根詰めるよーに新しい音を探す必要はねーと思うぜ?」

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「僕らも毎日新しいパンケーキなんて出せない。ときどきアレンジしているんだ」

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「今日はホイップクリ―ム乗せたから、明日はカットしたバナナとアイスクリームを乗せてみよう、とかな」

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「毎日新しい事を求めるのはまだ【少年】の精神があるからかもしれねーな。良いと思うぜ」