価値。その単語を改めて問われた時。
僅かに芽生えていた嫌気が脳内を埋め尽くし、表情の険しさが深まる。

「――君、本当に俺のことを知らないで……それで、その質問をしてるの?」
「……無回答と、させて」
それからは、長い沈黙がそこに横たわるだろう。
答えを待つものと、それを拒否するものが、ひたすら重苦しい時間を過ごしていたことだろう。
ただ――こちらは機械人形ではない。
居心地の悪さを感じるし、今会話できる相手に対して無視を出来る程血が冷たくもない。
暫し考えて、考え抜いて。ゆっくりと口を開く。
「誰にでも――価値はあると信じて生きているよ」
「それを判断する部分は、複雑で、多岐にわたって、自分の中身そのもので、
決して……観測の機能を持つだけの相手に語りたいものではないけど」
「役割でも、使命でも、功績でも。それらを持たぬとしても、
ヒトが持ちうるものの何か一つでも、僅かな価値すらないなんてことはあり得ないと思う」

「そこまで前向きな話でもないよ。
どんなヤツでも、使い潰そうと思うならほんの一銭生むことはできる、というだけ」
それは自分の考えではなく、生きてきた都市の摂理でしかないが。
自分もなんとなく、この場の終わりを察しはじめて。いくつか心の整理がついて、気持ちが軽くなったような気がする。
人は生きているというだけで、肯定されるべきものだ。
真っ当に生きているならば必ず。いや、悪事を働くなんてのも大いに結構。必要悪なんて言葉もあるもんだ。
それか病床に伏せていたとしても誰かの孤独を埋められ、治せば金は動き誰かの技能が磨かれる。
――その前提には。他の誰かがいてこそ、だとも思っているが。
その生を観測する者。その生を注ぐ相手。その生で受け取る関わり。物と同じく、人は一人では価値を生めない。

「最初に考えてた答えとは違うけど、
こっちなら……ま、聞かせてあげてもいいよ」

「心のうちに、誰かがいること」「……それそのものが、価値を形作るんじゃないかな」