Chapter01-05

記録者: 赤眼の白外套 (ENo. 34)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
対面のレンズが横を向く。何かを気取ったのだろうか。
その後の言葉で、終わりを示唆し始めた。
アイツは何に気が付いたのか、自分には知る由もないものだった。

そうして最終質問と称した問いを投げかけられる。
どうも今回は、何を語るでもないらしい。

自分の価値、価値?俺の今の価値……?
何も出来なかった自分に価値なんてあるのだろうか。
価値を語る資格すらないんじゃないのか。

人並以上に戦える事?あの日を生き延びられた悪運の強さ?
考えに考えた。数分、数十分、考え続けた。
ようやく搾り出せそうな言葉を見つけ、黙するレンズへと顔を向ける。

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「……今の俺に価値があるとは思ってない。思ってない、けど。
 俺を後押ししてくれた、そして関わってくれた知り合いがいる。」

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「俺が付けた名前を大切にしてくれる奴がいた。
 子供の癖に、また会いたいと、おもちゃの剣をくれた奴がいた。
 口は悪かったけど、仲間思いの奴がいた。」

じっとレンズを見つめたまま、言葉を続ける。

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「この外套を、わざわざ匿名で送り付けてきたお嬢様が居た。
 お菓子も贈って来たっけ。正直、バレバレだったけどね。」

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「頼りな…少しだけ頼りになる黒いお兄さんと頼りになる白いお兄さん。
 弱々しい王子様とその従者、短剣使いの先輩に……。
 とんでもない量の料理を積むやつら……あれは壮観だったな。」

懐かしみ、少し楽し気に語ってみせる。その口ぶりは、今までよりも優しそうに見えた。
白外套を擦り、その内側、隠れた右肩辺りを大切そうに撫でる。
話の腰を折りそうになった事に気づき、改めて本質を答える。

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「……っと、危ない危ない。つい懐かしんじゃったな。
 長くなったけど、俺の答えはこれってことで。」

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「クソみたいな自分の世界には俺の価値なんてないと思う。でも――
 俺なんかを信頼してくれた、そんな奴らがいる世界があるんだ。
 ……そんな所なら、俺の価値も少しは見いだせる……と思う。」

断定できなかったのは今の自分の弱さなのかもしれない。
もしかしたら、あの事を聞いたらみんな幻滅しちゃうかもな。
もう二度と会えないかもしれない奴らを望むのも、欲張りすぎだったか。