Chapter01-04

記録者: 赤眼の白外套 (ENo. 34)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
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(……何だ、今回は撮らないんだ。)

毎回の様に撮られるものだと思ったが、そうでもないらしい。
それならそれで構わない。今の顔は、あまり見せたいものでもなかったから。

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「譲れないものね。そうだな、前なら、こう答えていただろうね。
 何者にも縛られない自由って。」

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「でもさ、今の俺には、そんなものない。
 アンタが言う様に、状況が変わっちゃったんでね。
 俺だけが、一人自由になってしまったから、もう何もないんだよ。」

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(そう……俺だけが自由を求めて、逃げ切ってしまったんだ。
 俺が言い出した事なのに、誰一人助けられず、逃げる事に精一杯で
 俺だけが自由になって、どうすりゃいいのさ……。)

どうしても、忘れられない記憶が溢れかえる。自責の念に駆られてしまう。
今すぐに話題を変えたい。こんな顔もしたくないし、見せたくない。
この白外套は、そんな使い方をする物じゃないというのに。

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「アンタのそれは、そういう目的で作られたってだけでしょ。
 譲れないんじゃない。そう『命令』されて動いてるだけだ。」

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「……そういや、どっかの誰かさんも、前はそうだったな。
 逆らえず、言う事を聞いて、その日を生きるのに精一杯だった。」

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「アンタも気を付けなよ。今は良いかもしれないけど
 観察するものが無くなったら、不要って言われちゃうかもね。」

通じているかどうかも定かでない皮肉がつい零れて、虚しさがこみ上げる。
自分はそんなに、説教出来るほどの立場にあるはずもないというのに。