Chapter01-Fin

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「……回答を確認しました」


観察者は淡々と処理を続けているように見えるが、
どこかそれは“耳を傾けている”仕草にも似ていた。

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「当機の観測は、これにて終了します。
 記録は保存され、分析は後続機へ引き継がれます」


レンズがわずかに光を収束させ、あなたを見据える。
無機質なガラスに感情は映らない、
ただそれは淡々と観測を続ける機械でしかない。ずっと。

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「あなたが何者であるか──その定義は、あなた自身が決めるものです。
 当機はただ、それを観測したという事実のみを残します」


──そうして白い部屋がじんわりと、輪郭を失っていく。
まるで夢から醒めるように。


──そう。きっとこれは夢だった。


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「……観察対象。これにて接続を断ちます」



ガラス玉のような声が、虚空の中で響いていた。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
 観測が終わる、トイカケが終わる。
 気付けば、見慣れた執務室。
 刹那の夢のようなそれを、思い返していた。

 問われたこと。
 名前、自己定義、思考実験。
 譲れないもの。己の価値。

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「…………」

 瞑目していれば、声がした。
 馴染んだ声だ。誰よりも身近な人。

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「シャル様、お疲れですか?
 少し休まれては…………」

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「……………………」
「…………キィラン」

 青の瞳は真っ直ぐに、己の従者を見遣った。

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「……お前は、私の何処に価値を見出す?
 “シャルティオ王”か?
 それとも“シャルティオ”個人か?」

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「変な夢でも見られましたァ?
 問われれば、はい、答えますが…………」
「…………以前に言いましたよね、陛下」

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──私は、シャル様の治める
 魔導王国をこそ、見てみたい
、と」

 それが答えですとキィランが告げる。

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“シャル様の治める魔導王国”
 なくてはダメです。
 貴方様はこの王国に変革をもたらせる、
 唯一無二の御方にございます」

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「何を迷われているのかは知りませんけれど……
 この際、ひとつ明確に申し上げておきますね」

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私は、“王ではないただのシャルティオ”に、
 価値を見出しておりません

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「“本当の自分”を見てもらいたいのであれば、
 それこそ“お義父さん”や“義兄さま”にでも、
 甘えたらどうですか」
 「もっとも。今は、かの世界に行けませんけれど」

 ひらり、キィランが手を振った。

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「だって私、従者ですから〜」

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「……………………」
「……そうだね、キィラン」

 返すシャルティオの声音、微かな寂しさ。殺した。
 されどこれは自分で選んだ道だから。
 困難にも逃げず、這いつくばってでも進むと決めた道だから。
 弱い気持ちは呑み込んで、溶かし殺した。

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「…………いきなり、
 変なことを聞いて済まなかったな」
「…………これからも、
 私と共に歩んでくれるか?」

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「──仰せの通りに、我が君!」

 王の足元、従者が傅く。
 魔導王国の王と従者。これが今の関係。

 だけれどシャルティオは知っている。
 この従者はあんなことを言っているけれど、
 王の多少の無茶は黙認してくれること。

 シャルティオの革命とは関係のない過去の話。
 友の為に手を伸ばして傷付いたこと、
 その“優しさ”を、責めるではなく認めてくれたこと。
 キィランは、打算だけで動いて決断するとは限らないこと。
 知っている、から。

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「………………」

 王の青玉石の瞳が従者を見れば、
 従者の夜明け色が見つめ返した。

 だから、だからこそ信頼しているんだ。
 そんなお前だからこそ僕が間違えたら止めてくれるし、
 僕の意向もある程度は尊重してくれる。
 お前と共に歩む未来ならば、きっと。

 瞑目し、玉座を立った。

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「……私は少し疲れた。
 これより休憩に入る。
 キィル、お茶を用意してくれるか?」

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「仰せのままに!」

 先に出た従者を見送って少ししてから、
 王は執務室を出た。

 思考の続きはまた後で。
 今はとりあえず、お茶にしよう。