Chapter01-Fin

記録者: 夏揺 響 (ENo. 56)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「……回答を確認しました」


観察者は淡々と処理を続けているように見えるが、
どこかそれは“耳を傾けている”仕草にも似ていた。

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「当機の観測は、これにて終了します。
 記録は保存され、分析は後続機へ引き継がれます」


レンズがわずかに光を収束させ、あなたを見据える。
無機質なガラスに感情は映らない、
ただそれは淡々と観測を続ける機械でしかない。ずっと。

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「あなたが何者であるか──その定義は、あなた自身が決めるものです。
 当機はただ、それを観測したという事実のみを残します」


──そうして白い部屋がじんわりと、輪郭を失っていく。
まるで夢から醒めるように。


──そう。きっとこれは夢だった。


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「……観察対象。これにて接続を断ちます」



ガラス玉のような声が、虚空の中で響いていた。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
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「ふわ……ぁ」

大きな欠伸とともに、寝台のうえで背伸びを。
……おや、寝台?
たしか椅子のうえで仮眠をとっていたはずだったが。

けれどそれも見慣れた自室のものだ。
寝台の近く、サイドテーブルには一枚、メモが置いてある。

「ひさしぶりに良くお休みのようでしたので、
 お部屋にお運びさせていただきました。
 もし不都合でありましたら、
 次の戦場にて首級を常時の二倍あげお詫びいたします 
                       霧崎」


それを読み終わり、はあ~……とため息ひとつ。
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「相変わらず冗談か本気かわかりづらいんだよ、霧崎は……
 不都合はなく助かった、ってちゃんと言っておかないとな」

霧崎満散キリサキ ミチル。蝉の部下のひとり、大蟷螂オオカマキリの女性。
……もちろん、肉食の虫ゆえとても強い。
戦力としてもそうだが、性格の癖も相当に。

自分を寝室まで運んでくれた部下に対し
危なっかしい、とつぶやきつつ
だいぶ調子も良くなった、
有難いとも思う、そんなときだ。
ふと、眠りのあいだに見ていた夢を思い出す。

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「不思議な夢、だったな」

定義。世界。人情。信念。価値。
そんなことを、問われていた気がする夢。
夢のなかで自分が答えたことは、
今の自分が同じトイカケをされても、きっと同じ答えをするだろう。
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「当たり前だな」

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「俺は、俺でしかないのだから」

まだ少し疲れ気味であれど、
周囲を鼓舞・統率する才の片鱗が見えるかのような
前向きなニュアンスで言ってのける。

やっぱり、蝉の激務は続くのだろう。
彼の言う通り、炎天に散る日までは。
炎天の将の生き様、かくありき。