Chapter01-04

記録者: 夏揺 響 (ENo. 56)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
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「……ふむ」

譲れないもの。思考実験。
ただ繰り返されるトイカケ。
ようやく確信がついた、蝉はそれを踏まえて口を開く。
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「すまない、今まで貴殿のことを誤解していたようだ」

少なくとも、自分で想像がつく範囲の事態には、
目の前の人物は該当しない。
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「といっても俺も立場を優先する身だ、
 話せないことが多いのは変わらず
 申し訳ないんだが」

少しだけ、砕ける口調。
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「ただ、俺の譲れないものであれば
 たぶん大方は語れると思う。生き様、だ」

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「信念を貫き、己が信じたもののため
 この力を振るうこと。
 その生き方は、譲ることができない」

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「武芸者だからな、俺は。
 死に場所は決まってる、そういうことだ」

だれか、もしくはなにかのために。
戦い抜いて死ぬとしても信念を貫くこと。
それが、この蝉の譲れないもの、「生き様」である。