Chapter01-05

記録者: 楓 優希 (ENo. 188)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
私は、あれからようやく止まった涙の流れた跡を、余った袖口で拭いながら、静かにあなたの話を聞いていた。

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優希
「存在価値、ね…」

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優希
「聞いててわかるだろう?ついこの間無くなったばかりだよ。」

そう、おそらく、こちらの嗚咽なんかは向こうには聞こえちゃあいないかもしれない。それどころか、こちらの姿がハッキリ見えているかすら曖昧なのだから。

一つの間を置いて、また私は口を開き、目の前のレンズに向かって話し始める。

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優希
「私の、私の中での存在価値はね。教授や、博士…お父さんの優秀な右腕・・・・・であり続けることだった。」

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優希
「1番信頼ができて、そして1番目標になる存在。そんな人たちの右腕だなんて、とても光栄じゃないか。けれど…。」

喉が焼けるように熱くなる。目が苦しいと悲鳴を上げる。けれど、それを全て、喉の奥に押し込んで、飲み込んで。腹の底に、見えないように隠して。

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優希
「今はもう………そうじゃない。」

………こんなに苦しいなら、心が無くなってしまえば、どれだけいいだろうか、なんて、何度思っただろうか。
このひどく痛む胸に大きな穴が開いてしまえばいいと、一体何度思っただろうか。
けれどもこの胸は、軋みながら今も尚脈動を続けている。

脈動がうるさいぐらいにあたまに響く。
呼吸はしているはずなのに、胸が重く詰まって、苦しい。
身体が重くて、このまま地面に倒れこんでしまいたいという衝動を無理矢理納めて、再び足を組み直す。

………私はどうするべきだったのか。

終わりのない質問が、やたらと脳内を駆け回る。
そんな考えを押し殺して、ようやく重い口が開く。

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優希
「2人が居なくなった今、私の存在価値は無も同然。ここで野垂れ死んだって誰も悲しみやしないさ。」

絞り出すように出した声が、そいつに届いたかどうかはわからない。
ただ、無様なガキ同然なこの姿が彼に見られていないことを、心のどこかでひっそりと願っていた。