Chapter01-05

記録者: 御守 瑠海 (ENo. 140)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
「あはは!」
思わず笑いがこぼれてしまった。だが、それも仕方のないことだろう?
ついさっき、後回しにした課題が今帰ってきて、
そして、容易く答えを導き出せてしまったから。
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「僕は、自身の価値は他人が決めるものだと思ってる。
 僕自身がどのような価値を見出そうとそれは無意味だ。
 だからこそ、僕は他人の中に残ろうとする。」


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「誰の中にも残ってないという事は、無価値という烙印さえ押されず、
 人生に一切の価値を定められずに終わるという事に他ならないから。
 だから、この質問の答えはこうだ。
 常だって他人の価値観こそが、僕の価値を決めるものであり、
 それ故に僕自身が僕に与える価値は存在しない。
 僕の価値を他者に組み込んでいるのではなく、
 他者から与えられた僕への価値を僕自身に組み込んでいる。

 君がその答えに満足できるかは知らないが、これ以上の答えは用意できない。
 わかってくれたまえ。」