Chapter01-03

記録者: 楓 優希 (ENo. 188)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


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「記録しました。有難う御座います」

言葉と共にシャッターが下りる。
たとい先のあなたの言葉がどのようなモノであったとしても、
コレは変わらずこの言葉を吐いたのだろう。
どれだけ荒唐無稽な事を言おうと、無関係な事を言おうと、
静かで落ち着いた声は、波打つ事が無い。

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「観察対象、次の情報を取得します」

冷たいガラスのひとみが、あなたに次のトイカケを差し出した。

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「──次は簡単な思考実験を行います。
 あなたの目の前に一人の人物がいるとしましょう

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彼は明らかに困難な状況にあり、助けを求めています。
 しかし、助けるとあなた自身に損害が生じます


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──あなたはどう行動しますか?
 理由や、其れに至る思考回路を開示してください」


──あなたはこの仮定にどう回答をしますか?

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「当機には質問と観測以外の権限を持ち得ません。
 従って、この人物を助けることは不可能です」


何とも思考実験のし甲斐の無い回答ではある。
流石に此れでは回答例として参考にならないと思考したか、
継ぎ足す様に次の言葉が繰り出される。

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「この問いを考えるにあたって、あなたは複数の要素を考慮する事になるでしょう
 自らの能力、損得勘定、社会倫理、共感性、恐怖心、
 過去の経験、未来への予測、その他不確定要素……
 どの要素に重きを置き、判断するかを考えると良いでしょう」


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「思考の順序、葛藤、迷い──それらも重要な要素です。
 『まず相手の安全、次に自己の損害への憂慮・保身行為、最後に社会的評価』等の様に、
 優先順位及び時間軸での解釈の変遷は実に多様性に富むものでしょう」

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「また、其の人物が『何者であるか』も重要です。
 幼子であるのか、年長者であるのか、あるいは敵対する者か、見知らぬ存在か、親しい者か──
 立場や関係性によって、きっとあなたの判断基準は変化します。

 それらの場合でもまた、此の状況を考えてみてください」



Answer
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優希
「……」

全部は聞こえてないんじゃなかったのかよ、という気持ちに蓋をして。
おそらく、全ては聞こえていなくてもこいつはこいつの意思でこう言っているのだろう。
多分、答えてくれたこと全てに対して。

そうしているうちに、待っていた次の質問がこちらへと投げかけられた。

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優希
「君が思うような答えを出せないのは残念だ。当然だが、私はそんなの…」

もちろん、答えは一つだ。彼がどう思うかはわからないが、他の大衆からは理解ができないかもしれない。

……むしろ、大衆には反発されるだろう。心のないやつだと。それでも、私はこの回答を貫く。

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優希
「私は助けないよ。」

冷たい人間だと思われるかもしれない。世間知らずだと言われるかもしれない。
けれども私は、自分以上に優先しなければならない人間なんて、もう存在しないと思っている。

だって、いなくなってしまったのだから。
そう思えるほど信頼できる人が居れば別、なのだけれど、今はもう………誰も信頼できないんだもの。
もう、それなら誰の目も気にせず、選択くらいは自由にさせてくれたっていいんじゃないか?

…なんて、たくさん思うことはあったが、ここでは口を慎んで、当たり障りのないことを。

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優希
「それがどれだけ大きい損害かわからないものは助けない。もちろん損害があるのなら…いかなる人物を助けたって、こちらは結果的にマイナス…ということだろう。…………まあ、もし損害の程度がわかるなら話は別だがね。これぐらいの損失なら受けてもいい、と思ったなら助けはするよ。けれど、基本は助けないさ。」

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優希
「何せ、私にとって彼らは"どうでもいい"存在だからね。気に留める必要がない。」

まあ、これぐらいなら言ってもいいだろう判断した、この判断が正しかったか否かはわからない。
だって正直、他人なら苦しもうが死のうがこちらにとっては関係ないのだし、
その人に大切な人がいたとて、私には知るよしもないものだ。

………それに…損害がどうであれ助ける、という判断が、私の大切な人を1人、殺してしまったのだから。

もう助けようと思う相手もいなくなってしまった私には、あまりにも酷な質問に思えた。けれども、こいつは私の過去を知らないから、仕方がない、と、喉の奥が焼けるような気持ちも腹の底にしまい込んで。

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優希
「……さて、今回の質問はそれだけか。くだらんな。」

とだけ放った、私の声は少し鼻声だった。