
「譲れないもの…………?」
困惑した表情。
すぐに答えが出そうにもない。

「王宮魔導士?
雷の魔法使い?
いや、この辺は私の自己紹介の範疇だし、
そこまで私の中で大きなものでは…………」
あ、と手を叩いた。

「…………お兄ちゃん」
優しい笑みを浮かべて、語る。

「私はアルヴィレントのお兄ちゃんだ。
あの子ほど凄い才能なんてないけれど、
あの子よりも先に生まれて、
あの子を守るべき立場にある……
お兄ちゃん、だよ」
天才ではない。むしろ凡才。
“天才に並び立てる秀才”になろうとしたこともあったが、
それよりももっとずっと大切なもの。

「私はお兄ちゃんとして、
あの子を守るし支えるよ。
これからも、ずっとね」

「…………もう二度と、
寂しい想いはさせたくないから、さ」
そんなことを言っているくせ、
いざという時は自己犠牲が選択肢に入り得る。
それを自覚してはいる。

「…………私は、ずるいお兄ちゃんだよ」