Chapter01-04

記録者: シルヴィレント (ENo. 87)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

クリックで開閉
icon
「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

icon
「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

icon
「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

sample

icon
「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


icon
「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


icon
「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


icon
「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
icon
「譲れないもの…………?」

 困惑した表情。
 すぐに答えが出そうにもない。

icon
「王宮魔導士?
 雷の魔法使い?
 いや、この辺は私の自己紹介の範疇だし、
 そこまで私の中で大きなものでは…………」

 あ、と手を叩いた。

icon
「…………お兄ちゃん」

 優しい笑みを浮かべて、語る。

icon
「私はアルヴィレントのお兄ちゃんだ。
 あの子ほど凄い才能なんてないけれど、
 あの子よりも先に生まれて、
 あの子を守るべき立場にある……
 お兄ちゃん、だよ

 天才ではない。むしろ凡才。
 “天才に並び立てる秀才”になろうとしたこともあったが、
 それよりももっとずっと大切なもの。

icon
「私はお兄ちゃんとして、
 あの子を守るし支えるよ。
 これからも、ずっとね」

icon
「…………もう二度と、
 寂しい想いはさせたくないから、さ」

 そんなことを言っているくせ、
 いざという時は自己犠牲が選択肢に入り得る。
 それを自覚してはいる。

icon
「…………私は、ずるいお兄ちゃんだよ」