
???
「ハァ…、お前こそなんなんだよ、ずかずかと人のプライベートに土足で立ち入るつもりか?」
ここがどこか、一体なんの空間なのか。そう考えていた私に間髪入れずに話しかけ続けてきたカメラ男に、内心うんざりしていた私は、心底ウザいと言わんばかりに言葉をぶつけた。
そのまま私は、ようやく話し終えたらしいカメラ男を放って、まずはこの空間の観察から始める。
この真っ白の空間には、椅子以外には何もない。それどころか、どこかドアなんかがありそうな影すらない。ここは狭い一部屋なのか、はたまた広い一つの空間なのかすら、把握できないような状況だった。
けれどもどこかに歩いて行ってしまえば、2度とここへと戻って来れなくなりそうな恐怖感に、私は立ち上がることができなかった。
そうして座ったまま、一通り周辺を観察し終えた私は、せっかく質問してくれたことに答えないなんて、流石に可哀想かもな、という思いが湧いて出てきた。
すると、カメラ頭が自己紹介を始めた。
…どうやら思ったより、この周辺の観察に時間はかかっていなかったらしい。
こいつの素性に興味が出てきた。そのまま、一通り終わるまで耳を傾け続ける。

???
「なるほど、オブザーバーか、ふぅん…」
そのまま自己紹介を聞いていたが…大体は理解した。あと、ついでに機械人形の中にAIが入って動かしていることも。
………………しばらくの沈黙の後。…いわゆる要約されたそれを聞いて、ガキだからと馬鹿にしてるのかと思ったが…確かに、普通ならさっきの説明で理解が及ばないことぐらいはすぐに理解できた。
そうして、「そこまで言うなら、名前ぐらいは教えてやろう」なんて言って、私は足を組み直した。

優希
「私は優希。ただの研究員の端くれだよ。」
返答はない。思えば、そもそもこいつが本当にただの記録を目的としたものかも怪しいものだ。
こんな部屋に1人。当人はいた理由すらわかっていないようだったが…考えてみれば、嘘なんていくらでもつけるし、いくらでも外部の物も利用できそうだとも考えていた。
そもそも、それ以前に私は、この空間が夢なのか、はたまた現実なのか区別すらついていない。
幻覚か、存在しているかもわからない。敵の刺客かもしれないこいつに、一体どこまで教えるか。
私は少し悩みつつ、再びカメラ男に向かって口を開く。

優希
「………お〜い?…自分から聞いておいてその態度か?……あ、それか…さてはまさか〜なんて疑ってるな?」
まあ、当然だろう。何せ私の身長は146cmしかない、どこからどうみてもまだ子供だ。いや、実際まだ本当に14歳ではあるが…下手をすればこの体格で小学生にも見えるほどだろう。
そんな奴が研究員なんて、普通の感性をしていれば"嘘に決まっている、そんなわけがない"、酷ければ"頭がおかしいのだろう"なんて思うような奴もいるかも知れない。
だが…残念ながら、頭がおかしいのは本当に私の方なのだ。

優希
「残念だけど嘘じゃないさ。理由は簡単。…………全て、恵まれすぎたんだ。…私は。……この意味ぐらい、少し考えればわかるだろう?カメラ頭。」
相変わらず返事はない。またひとつため息を吐いた。
そもそも、こんな得体の知れないやつに私の過去を話すメリットも思い浮かばない。
ずっとこの調子なら。
それなら、また話してもどうせ同情も何にもなしに黙って"記録"しているだけだろう。
それなら、これ以上話しても、私の醜態が晒されるだけ。やめだやめだ。

優希
「……ま、これ以上の情報は不要だろう。話す義理もないしね。こっちのことを知りたいなら、それ相応に、お前のことをもっと教えてくれないと。」
そう放ち、私は再び口を閉ざしたのだった。