Chapter01-Fin

記録者: 早瀬 颯切 (ENo. 54)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「……回答を確認しました」


観察者は淡々と処理を続けているように見えるが、
どこかそれは“耳を傾けている”仕草にも似ていた。

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「当機の観測は、これにて終了します。
 記録は保存され、分析は後続機へ引き継がれます」


レンズがわずかに光を収束させ、あなたを見据える。
無機質なガラスに感情は映らない、
ただそれは淡々と観測を続ける機械でしかない。ずっと。

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「あなたが何者であるか──その定義は、あなた自身が決めるものです。
 当機はただ、それを観測したという事実のみを残します」


──そうして白い部屋がじんわりと、輪郭を失っていく。
まるで夢から醒めるように。


──そう。きっとこれは夢だった。


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「……観察対象。これにて接続を断ちます」



ガラス玉のような声が、虚空の中で響いていた。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
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「……あんたも結局、人任せにはされてくれねえ、か。
 人の話に答える気あるんだかないんだか」

半ば独り言のように零す。
その、瞬間。

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「! おい待て、
 俺から聞き出したことを
 何に使うかくらいは……」

ぼやけていく部屋。
見逃そうはずもない。
とんぼの目は、良く見えるのだから。
けれど見えたところで抗えるわけでもない。
伸ばした手ごと、部屋もなにもかもが輪郭を失い、

途切れる。

……

…………

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「……、っと」

はっと気づく。
そうだ、今も任務中だというのに
何を呑気にうたたねなどしていたのだ、自分は。
視界にちらと見える夜の色を認め、ああ、とため息をつく。
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「……たまの寝落ちくらい、見逃してくださいよ?」

聴こえているだろうから、そんなことを独り言のていで言って
「仕事」に戻る。
あまりに短い夢でも、監視のない場で
己の本音を吐露した体験は、まるで
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(マジで困ったもんだ)

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(蜜のような味だった、なんておかしい形容だけどよ)

鬼蜻蛉は肉食である。
そして、その牙を求められているのだから。
……求めているのは、別に自分ではないけれど。
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「気楽に言ってくれる」

自由がない身に、己で定義と価値を決めろだとか。
無責任で、気軽で、あまりにも、

夢のような話を、持ちかけるんじゃあない。
今日もまた、いつものように
過ぎていく消耗品でしかないんだから。

……それに。
敢えて最後まで言わなかっただけで、
今自分にないもので、もう手に入らないものであるというだけで、
自分の「価値」があるとしたらここなのだろうということも、
わかっちゃいるのだ。
……思い知らせるなよ。惨めになるだろ。


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("翠"としての俺は死んだ。もういねぇんだ)
炎天の下、あの人と笑いあった黄昏の日は、遥か彼方。