Chapter01-05

記録者: 早瀬 颯切 (ENo. 54)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
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「ほんっと」

大きく蜻蛉は嘆息を。
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「ヤな性格してんなあんた。
 俺とタメ張れるぜ」

意図した振舞いが強い蜻蛉と、
ただ観測する者とはまた全然違ってくるのだろうが。
途中からの問いは蜻蛉にとって
痛いところを、突かれてばかり。
余裕があったときよりもきっと、嫌味もまともに言えちゃいない。
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「俺の価値なんて、俺が知りたいくらいだ。
 無価値にならないとしたら
 思い付くのは命あっての物種だってことぐらい。
 なあ」

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「……あんたは、どうせ答えやしないだろうが。
 俺は教えて欲しかったよ、俺の価値ってもんが
 果たしてあるのかどうか、さ」

ぽつり。
最後の言葉は、いままでの蜻蛉からは考えられないくらいに
弱弱しいものだった。