
「う。」
顔を撮られたような気がする。
あまり良い気分はしない……撮られ慣れていないから。
多分彼にとっては、メモ帳にメモを取るみたいな、些細な動作なのだろう。だってカメラだし。
でもきっと自分の顔は、苦笑いをしていた。恥ずかしい。
それはそうと、トイカケられる。自分に
普通を答える権利があるのだろうか。
でも、自分とそれ以外には誰も居ない。
自分が答えなければならない。

「自分の世界と比較できる世界は、知ってます。行ったことは、まだ……ない、ですけど。
色々見たのは、丁度今の時期、だったはずです。冬の中頃に。」
殺し合ったことがある、とは言わないようにした。言い方が悪いし、怖がらせたら、殴られるかもしれない。
何より模擬戦みたいなものだったから、死んだかどうかは
神の味噌汁神のみぞ知るってやつ。
……あれも、もう二年前くらい前のことか。
恐怖の感情は、段々と落ちつきつつある。必死に言葉を探していたら、怖いなんて感じる暇はなくなるらしい。
人間の頭は単純で助かった。

「他の世界には、魔力とか魔法みたいな、ファンタジー小説の中の出来事が、実在しているそうです。
あ、あるいは巨大なロボットとか、宇宙国家とか……そういうものもあるそうです。
俺の世界にそういうのはありませんでした。地球だったので。」

「た…ただ、一つだけ、とんでもない物が存在してました。
バイオシャーク……人に造られた、殺戮兵器です。発達しすぎた科学、って言うんですかね、そういうの。
それが人々を襲って食うんです。建物ごと。爆発したり、陸上を走ったり、テレポートしながら。
お…おかしな話ですよね。信じてもらえないかも、なんですが、それが俺たちの世界です。」

「ふ…普通なんて、分かりません。
……っただ、少なくとも俺は、自分のことを、普通"だった"、と、思っています。
少なくとも、それに巻き込まれるまでは……普通の人間だったなって、思います。」

「出来る事なら、見ず知らずの他人の血肉なんて見ずに、穏やかに生きたかった。
そう願うのは、人間としておかしくない事……ですよね?」
機械にそれを理解できるかどうかは、わからないけど。
普通の専門学校を出て、普通の―いや、少々過酷だったが―職場に就職し、ただ特別なことをせず生きていた。
なのに、ある日突然
モルモット兼人間兵器として
人食い鮫のばけものと戦うことになるなんて、普通なら嫌がるはず。
現代人は、戦争だって嫌がるんだ。軍すら手を煩うバイオシャーク相手となると、もっと嫌だろう。
もっとも、そういう嫌なことを引き受ける人がいるから、生活は成り立つのだが。
ああ、泣きそうだ。多分とても酷い顔をしていると思う。
ヒトの血肉なんて誰が好き好んで見るものか!中学二年生ならそうかもしれないが、俺はもう三十路過ぎのオッサンだ。
確かに生きてるうちに特別になりたいとか、ブラックな職場から逃げたいとは思ってた。思ってたけど!
なんで俺がそんなものに巻き込まれなくちゃならないんだ!他の人でも良かったはずだ!
しかもこんなとこで質問責めされるし。何をしたっていうんだよ、俺が……

「なんで、なんでいつも俺ばっかり…
兄貴はいなくなるし、親には見限られるし、彼女は浮気するし、改造人間になるし……ぐすっ」