Chapter01-05

記録者: 白埜シンフゥ (ENo. 130)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
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「……」

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「影響、じゃな」

シラノは逃げ腰である。半端者である。
主人公にはとても向いていない。
だからこそ、舞台の骨組みである劇作家に彼はなった。

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「わしが存在するだけでどこかに何かが残る。変わる。影響する。良くも悪くも」

清濁併せ吞む、という言葉がある。
人間と鬼、陰と陽、混ぜこぜの自分に似合いの言葉だとシラノは思う。良し悪しなど、どちらの視点で見るかでしか測れない。ゆえに、変化そのものをシラノは書き留める。物語として。

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「変化を起こした結果じゃのうて、変化を起こせるそれ自体に価値がある。」

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「……そう思わんとやっとれんわ」


沈黙。
あるいは、観察。
一方通行どころか届いているのかすらも不明瞭な問答。

しかしそれでも、問いかけが続くからには、相互に影響し合っていると言えるのだろう。

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「わしはおまえさんとの出会い、なかなかに“価値がある”と思うとるよ」