
「……」

「影響、じゃな」
シラノは逃げ腰である。半端者である。
主人公にはとても向いていない。
だからこそ、舞台の骨組みである劇作家に彼はなった。

「わしが存在するだけでどこかに何かが残る。変わる。影響する。良くも悪くも」
清濁併せ吞む、という言葉がある。
人間と鬼、陰と陽、混ぜこぜの自分に似合いの言葉だとシラノは思う。良し悪しなど、どちらの視点で見るかでしか測れない。ゆえに、変化そのものをシラノは書き留める。物語として。

「変化を起こした結果じゃのうて、変化を起こせるそれ自体に価値がある。」

「……そう思わんとやっとれんわ」
沈黙。
あるいは、観察。
一方通行どころか届いているのかすらも不明瞭な問答。
しかしそれでも、
問いかけが続くからには、相互に影響し合っていると言えるのだろう。

「わしはおまえさんとの出会い、なかなかに“価値がある”と思うとるよ」