四方八方が白に包まれている。自分は何故ここに居るのだろう、またカイネが俺に何かしたのか。
……居心地が悪い。人間をやめさせられたあの日のことを思い出す。
ここまで何もないわけではなかったが、とても無機質な場所だったことに変わりない。
ただ無我に、そこにあった椅子へ座る。
目の前のカメラ頭に、それほど疑問は抱かなかった。
ヒトとサメは腐るほど見ているが、それ以外の生き物だって見たことがある。
外の世界にはそういうのも居るのだろう。
あるいは、所長辺りが作り出すなんてこともあるかもしれない。
少なくとも、人間を不死にする細胞があるくらいだ。
機械人形だって存在しうるだろう。

「…あ、えっと。ふ、札川と言います。札川 英治……
な、まえの、由来は…わからないです、俺にも」
何を言っても、どもる。あの日のトラウマが口の中を支配する。
大丈夫、これは多分俺を否定することも、肯定することも無いだろう。
少なくとも経過観察の記録に人格否定や𠮟責は必要ないはずだ。
そもそも、この機械が俺のことを理解するか否かに、それほど期待はしていない。
そう、自分に言い聞かせる。
でもどうやったって落ち着かない。この場所が怖い。
直ぐにでも助けてほしい。目が泳ぐ。どうして扉が無いんだ?どうやってここに連れてこられたんだ?
これは夢?それとも現実?いいや、現実なわけがない!
周りを見れば見るほど、冷たい汗が首を伝う。
……死にたくない。痛いのも出来れば避けたい。ならば、従わなければ。
従えば、ここから出してもらえるだろう。そうであってほしい。

「あ、じ、G.S.A.S.って、御存じですか。俺の勤め先…大暴れするサメをぶっ飛ばしてるとこ、なんですけど。
俺そこで仕事してて、あ、はは、分からない、ですよね。すいません…」
口が滑らないよう、丁寧に、言葉を絞り出す。
少なくとも自分を自分たらしめるには、その二つがあれば十分だ。
それ以外のことは、まだ話す必要がない、はず。