Chapter01-Fin

記録者: ルイ=テネーブル (ENo. 46)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「……回答を確認しました」


観察者は淡々と処理を続けているように見えるが、
どこかそれは“耳を傾けている”仕草にも似ていた。

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「当機の観測は、これにて終了します。
 記録は保存され、分析は後続機へ引き継がれます」


レンズがわずかに光を収束させ、あなたを見据える。
無機質なガラスに感情は映らない、
ただそれは淡々と観測を続ける機械でしかない。ずっと。

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「あなたが何者であるか──その定義は、あなた自身が決めるものです。
 当機はただ、それを観測したという事実のみを残します」


──そうして白い部屋がじんわりと、輪郭を失っていく。
まるで夢から醒めるように。


──そう。きっとこれは夢だった。


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「……観察対象。これにて接続を断ちます」



ガラス玉のような声が、虚空の中で響いていた。


ここトイカケはありません。回想や感想を自由に記入したりしなかったりしてください。
Answer
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「……」

安宿の寝台の上。
床に放り投げられた賽子。
六の面を上に静止するふたつ。
転がっている、空けられた果実酒の瓶。
昨夜眠りにつく前そうなったことは明白の状況だ。

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「……痛って……」

二日酔いだ。
動けないほどではないが頭が痛む。
いつものことだった。
これは、盗賊のいつもの日常。
ただ、ひとつだけ違うことがあった。

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「……変な夢も見るし。まったく散々だぜ」

白い部屋、魔法生物らしき者と問答したような。
そんな記憶がはっきりと脳裏に焼き付いている。
……酒に溺れて見た夢にしては、いやに鮮明すぎるほどだ。

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「はあ、つまらねえ」

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「途中まではいい感じだったのに、
 なぁんであんな事言ったんだか、夢の中の俺はよお」

最後の問い。
あんなことを口にしたのは、いつぶりだったろうか。
なぜ馬鹿正直に、自分の弱さを露呈した?
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「……」

ちらと思い当たることがある。
すぐさま荷袋から取り出した短剣を虚空に振るい、
その勢いでそいつを掻き消した。
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はは、あり得ねーな!

そんなふうに軽く笑い飛ばして、
ろくでもない盗賊はろくでもなく生きていく。
こんな夢のこと、酒の肴にでもして喰らってしまおう。
あの一瞬の思い当りはその邪魔になる。




もしかしたら長い事、
弱音を聞いてもらいたかったのかもしれない。
誰でもいいから、知ってほしかったのかもしれない。
自業自得の人生、その末の現在に罪悪感がないわけでもない。

そんなこと、認めてしまったなら。