
「はあ?譲れないモン?」
何言ってんだコイツ?みたいな雰囲気を出しながら
頬杖ついて盗賊は目の前の人物を眺めた。
慇懃ですらない無礼はこの男の標準装備である。

「さっき話したくれぇじゃ足りなかったか?
面白さだよ。面白さ」
先ほど自分に損害が出ても人助けをするか?
その問いに「唯一の例外」として持ち出した概念。
面白ければ何でも良い。逆に言えば、全てにおいて面白さは譲れない。

「賭博。小説。盗掘。宛もない旅。
俺の核にしたいモンは全部、面白いモンさ」
意外と面白いもの、の定義のなかには
文化的なものも含まれている。
ドブネズミを自称する盗人だという割に。

「刺激が強いなら強いほど、理想に近ぇな!
だってそうだろ?俺は盗賊なんだ。
例えるなら、アレだぜ?」

「とんでもねえお宝を見つけた時!
これぞ盗賊の生き様、真骨頂ってヤツだろ!
そんで俺にとってのお宝は面白さ。
お宝を誰かに譲ってやる盗賊なんざ、義賊以外にいねぇだろ」
珍しく朗々と語り、ふうと一息ついて一言付け加える。

「見ての通り俺は義賊なんかやる気
さらさらねぇしな!!」
……案の定、その一言はだいぶ余計であった。