Chapter01-04

記録者: 早川 薺 (ENo. 184)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「では観察対象。それを踏まえて、次の問いです」


シャッターは下りないまま、
ただピントを合わせるようなジジ、という小さな音だけが聴こえてくる。

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「あなたの価値観を測ります。
 ──あなたにとって譲れないものは何ですか?
 自由でしょうか、信頼でしょうか、愛情でしょうか、それとも秩序でしょうか 」

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「その理由も含めて説明してください。
 対象や状況が変わった時、
 あなたの答えはどのように変化するでしょうか?」


──あなたは自らの価値観をどのように認識していますか?

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「譲れないもの、とひとえに考えても即座に思いつかぬ場合もあるでしょう。
 自由、信頼、愛情、秩序、誇り、忠誠、知識……無数の選択肢が考えられます。」


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「当機は観測を第一義として設計されています、
 どのような思考をせど、必ず『観測』という目的を前提に持ちます。

 これは精神的価値としての『誇り』や『忠誠』とは異なります。
 しかし、機能としての観測が揺るぎ得ない前提であるという点では、
 それらに類する不変性を持つと言えるでしょう」


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「思考の前提、当然と感じている事、
 それこそ、先の思考を組み立てる際に自らが重視したものを改めて噛み砕くと良いのやも知れません」


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「回答は単一である必要はありません。
 譲れない価値の間で揺れる感情や葛藤も、重要な要素です。
 必要に応じて検討を続けてください」

Answer
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「む、むずかしいですね……」

自分で普段考えない様な事を何度も聞かれ続ける。
自己を知るという分にはいい機会だが、毎度毎度悩む羽目になりそうだ。

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「譲れない事……そう、だなぁ……」

そのままだと答えきれないと判断したのか、少しだけ回答の方向性を変えて。

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「少し趣旨とは外れるかもしませんが。……私は、大切なものに手を出されるのがすっごく嫌です。」


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「もっと具体的に言えば、大切なものが脅かされること……か、な?


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「そういう意味では、私の価値観。
譲れないもの、は。私の大切なもの、なのかもしれません。」

今の自分にとっての大切なものは日常だ。記憶を失って、過去を俯瞰でしか見れなくなった後で残った自分にとっての幸せ。
それを脅かされるのは、そういう意味では譲れないだろう……と。

記憶を失う前の自分の大切なものはなんだったのかと、口に出さず思索しながらそう締めくくった。