Chapter01-05

記録者: シャルティオ (ENo. 14)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

クリックで開閉

  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

icon
「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

icon
──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


icon
「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
icon
「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
 最終質問。
 不思議なトイカケも、
 これで終いのようだ。

icon
「存在に、価値…………」

 青玉石は、変わらず、真っ直ぐに。

icon
「私は……前の問いに、
 譲れないものについての話に、
 “王であること”と返したね?」

 左手を胸に当てた。
 その問いへの答えと同じだよと、返す。

icon
「私を私たらしめているのは……
 私に価値を与えるのは。
 すなわち、私が王であること

icon
「出来損ないの第三王子のままでは……
 ダメだったんだ」

icon
「王になる前の私にも、
 価値はあったのだろうが……
 その頃の“僕”を見てくれた人もいたが。
 あれでは、ダメだったんだ」

icon
「喉が嗄れるまで訴えかけようが、
 疲れ果てるまで暴れようが。
 力がない人間がそれをやったところで、
 誰にも顧みられやしない」

 何かを思い出すかのように、瞑目した。

 風の兄フェンドリーゼに救われなければ、
 ずっと昔に終わっていた命だ。
 出来損ない、失敗作と嗤われて、
 光の差さない獄の中で果てていた命だ。

icon
「だけれど、そんな無力な“僕”は
 “私”になった、王になった。
 何かを変える力を手に入れた。
 もう、無力ではなくなった」

icon
「兄さんに託されたこの地位こそが、
 私を私たらしめる、絶対的な価値


icon
「私は──王だ!」


 だからこそ。
 その役割に相応しい人間になろうと、
 その役割を全うしようと、
 暗中模索、試行錯誤、一生懸命!
 足掻いているんだ。

 権力を手にしたから、それを活かす。
 完璧な理想の世界なんて、存在しないのは分かってる。
 だけどそれでも少しでも、
 日陰で泣く人が減るようにって。
 自分ならば、その痛みを理解出来るから。

icon
「“王でなくなったシャルティオ”には、
 もう、価値も意味もないんだよ」

 その笑みは少し寂しげだった。