Chapter01-05

記録者: 桜 かなめ (ENo. 165)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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  ──カシャ


シャッターの音の後、あなたを向いていたレンズがふと向きを変える。
何か未知のことを認識した様子で、その後にまたあなたにひとみが向いた。

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「観察対象、最終質問を提示します」


この対話の終端が近いようだ。
不思議な白い部屋での対話は、何の説明もなく始まり、そして終わるらしい。

奇妙な観察者は感慨もなく告げ、一拍。

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──あなたは、何をもって“自らの存在に価値がある”と判断しますか?


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「それは役割でも、使命でも、功績でも構いません。
 また、価値は不要であるとする見解も有益な観測結果となります。

 あなた自身が、どの基準で己を“肯定”し、
 何をもって“無価値”とせずにいられるのか。

 その価値に他者を如何にして組み込んでいるのか、
 その内的構造を、開示してください」


──あなたは自らに〝どのような価値〟があると認識していますか?

 
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「当機は、あなたの答えを推論する事はできても──
 代弁する事はできません
 故に此度は、 あなた自身の言葉で語られることを要求します」
Answer
「価値かー」

「・・・」

「価値ねー・・・」

「価値がある、肯定するって言葉に合致するか
 わからないけど、
 私は今日を生きなきゃなって思ってる。
 それは周りのひとのためかもしれないし、
 自分を守るためかもしれないけど、
 生きなきゃなって思うんだ。」

「だって、私には歴史があって、
 遺された物があるから」
「それを思い出すと、生きなきゃなって思う」
「過去は変えられないし、後悔しても何をしても
 変わらないから」

「絡まった蔦みたいに考えても
 結局はそこに戻ってくるんだ」
「過去は変わらない」
「空いた穴は大海ですら満たせないんだ」

「満たせない形はそれ自体が大切な形だから、」

「それを忘れちゃうのは良くない」

「んー、だから忘れないことに価値があるのかな・・・?」
「わたしは忘れないから価値があるのか、な・・・?」

「うまく答えられてないかもね」
「本当に難しいね」

「人間はさ、お葬式のときに花をたくさん入れるでしょ」
「まわりにたーっくさん」

「そんな感じで、私が生きていろんなことを経験することは、
 空いた穴の周りにいろんなキラキラしたものを飾っていくことになるの。
 そうやって穴の周りを色んなもので埋めていく。
 命が尽きるまで。」

「そこまでしたら、私はちゃんと、踏ん切りがつくのかもしれない」 

さっきよりはすこし緩やかな表情で答えた。