シラノは頷く。
答える義理はなく、一方通行であるならともすれば、答える意味すらない。それでも己が目的を遂行する対面。
と、すれば。

(バカ真面目な奴じゃなァ)
カメラ男――オブザーバーと名乗った彼を、シラノはそう評価する。そして。

(こういう奴、わし好きじゃね)
目的が明確な者は良い。スポットライトを自ら生み出し己に照射できる、活力がある。
――――好ましい。
シラノはむしろ自分が観劇するかのように柔らかな目つきでもって、言葉を練っていく。

「……食うもんと食われるもんがおんなじとこで生活しとる世界におっての」
嵐の目に居て嵐は観測できない。
ゆえに、シラノはまず己を取り巻く社会から語る。

「殺されんように、殺さんように、がんばる。ほんで、殺し殺されが意識に入らんくらいのんびり暮らせるようになる。それが普通」

「であってほしい感じじゃなァ」
あいにくと、シラノの語る普通はさほど叶った試しがない。なぜならば、シラノは外れ値に位置する自覚があるからだ。

「食うもんが、鬼。
食われるもんが、人間。
鬼は血ィ吸うもんが多いけ、吸血鬼、言われることが多いか」

「んでまあ、わしがややこしゅうて……。
半分人間で、半分鬼なんじゃよなァ」
ふう、とため息を吐く。
重なる部分があるゆえに、より排斥される根無し草。普通とは何か、などという問いには、シラノ自身が毎度困らされているのだ。

「“普通”は……」

「いきなりこんなヘンテコなとこにゃ、飛ばされんわな」