
「うげ、それって俺の話がブツ切りで聞こえるってこと?電波悪いときの通話みたいに?
そんなぁ!」
撮られたことにそれほど不満は無かった。
ネットの仕事で散々撮られ慣れてるし。
でも、言葉を完全に受け取る事は難しいというのは、ちょっとショックだった。
もしかしたら握手しようとしたことも見えなかったのかも……
でも、これってつまり、向こうから干渉するのも難しいってこと?
殴られたりはしなさそうだ。よかった……
いや、安心しどころじゃない。この人に、俺の身の上を話しても大丈夫なのか?
やべー企業のスパイだったりとかしたら――
―――でも、辺りを見回したところで、この部屋にはこの椅子以外何もない。
水辺もないから、バトルもできない。
大人しく話すほかない。……俺に話すことなんてあるのか?

「あ、うーん…多分、カメラさんと俺の世界は、すごく違うってわけではないんじゃねーかな。
一日24時間で、一週間は7日。一年は365日くらい、だろ?
魔法はよくわからない、でも科学が発達してる。だから多分、似たような地球なんだと思う……多分な?」

「俺の住んでる場所で他と違うことってーと……"アヒルバトル"ってのがあることかな。
前に知り合ったイセカイジンが言ってたんだ、他の世界にはないんだって。
ま、ソイツがマジのイセカイジンだったかは知らねーけど」

「水の上にアヒルバトル用のアヒルを浮かべて、それを操って戦うんだ。
沈んだり、フィールドから落とされたりして戦闘不能になったら負け。逆に相手をそうしたら勝ち。
ここにアンタ用のアヒルとかプールとかは、なさそうだけど…。
俺、たま~に店のイベントで近所の子にやり方教えてっからさ。いつか教えてやんよ」

「あ、それ関係でさ、古代アヒル文明とかアヒルエネルギーとかってのもあるんだって。俺の世!
店のバイトがそーゆーの詳しんだけどさ、俺はそっち系詳しくねーから割愛な。」
そうして、ざっくり世界の話をして…"普通"の定義を考える。

「で、普通……普通かぁ~~、普通じゃないもの沢山見ちまったから、俺にはムズカシーよ。
……あ、でも、多分だけど」

「"それがそうであることを疑問に思わない"って状態は、普通ってことじゃねーかな?
なんつーか…外から見て変でも、中の人がそれに気づかないなら、普通じゃないことに気づけないだろ。」

「少なくとも、俺は親父がよく失踪するのはおかしい!ってこと、小学校になるまで知らなかったし。
自分が普通かそうじゃないかなんて、自分以外のものを知らないと判断できねーよな。
まあ、そもそも俺に普通であるかどうかを判断する権利なんてないだろうけど。」
他人のいう「普通じゃない」とか、「変」とかは、あまり信じられない。
結局、変か普通かを決めるのは個人の価値観なんだし?