Chapter01-02

記録者: 真ヶ門アキト (ENo. 182)
Version: 1 | 確定日時: 2025-11-30 04:00:00

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「……」

あなたの回答を──若しくは無回答を聞き、
ソレは少しじっとあなたを見詰めていた。


  ──カシャ


それから、また先にあった音が一つ。
撮ったものを確認するような間の後、深々と頭が下がった。

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「観測結果が不明瞭です。
 当機からはあなたの言葉を完全に受け取る事は難しいようです」

どうも椅子の〝こちら側〟と〝あちら側〟では具合が違うようだ。
あなたの言を確実に受け取れているかは、あちらもこちらも分かり得ないだろう。

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「では観察対象、続けましょう」


されどコレにとっては断片でも構わないのか、きゅり、とまたレンズがあなたを向く。


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「環境データの取得。あなたの属する世界を説明してください」

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「あなたの世界では、“普通”とはどのような状態を指しますか?」


──あなたは、異世界の存在にあなたの世界のどのように説明しますか?


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「当機の世界にはこれと言って特徴があるとは考えられません」

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「当機は異世界に対する情報を持ちません。
 よって、何が特色であるかを判断するには情報が不足しています」

──基準や比較対象が無ければ、世界の比較とは難しいものだろう。
自らの世界に当たり前に存在しているものが、他の世界では存在しない可能性すらある。
自らの視野では存在しないものが、世界の中には存在している可能性だってある。

つまりは、この質問は不毛なものではある。
……比較対象が無い限りは。


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「──あなたに回答していただくためには、
 当機の世界を説明せねばなりません。
 よって当機は、平均的な一般家庭の生活環境についてご説明致します」


もしあなたが回答に窮しているのであれば、
オブザーバーの言うものを参考に、比較して述べると良いのだろう。

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「朝9時に出社する方は、平均して朝7:22に起床致します。
 家事仕事用の自立稼働人形が6時には稼働を開始しており、
 起床し着衣を着替えた後には朝食を摂取する事が可能となります。
 起床から出勤までには平均28分31秒の時間が経過しています」

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「出勤には電車やバス──公共の車両を利用する方、
 運搬用人形を利用する方ほか、徒歩で出勤する方など様々です」

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「……コンプライアンスに基づき、出勤後については
 当機から申し上げる事は出来かねます」


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「7日を一週間という単位にし、
 うちの4日が平日、うちの3日を休日と制定されております。
 居住する地は球体の惑星、衛星は現在1つ観測されております。
 衛星及び他の惑星の生活様式については当機のデータベースには御座いません」



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「……以上の内容は参考にする事は可能ですか?」



……とはいえ、此れをなぞらえる必要も無い。
あなたの自由に回答してよいだろう。

Answer
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「うげ、それって俺の話がブツ切りで聞こえるってこと?電波悪いときの通話みたいに?
そんなぁ!」

撮られたことにそれほど不満は無かった。ネットの仕事仮面バトラーで散々撮られ慣れてるし。
でも、言葉を完全に受け取る事は難しいというのは、ちょっとショックだった。
もしかしたら握手しようとしたことも見えなかったのかも……
でも、これってつまり、向こうから干渉するのも難しいってこと?
殴られたりはしなさそうだ。よかった……

いや、安心しどころじゃない。この人に、俺の身の上を話しても大丈夫なのか?
やべー企業のスパイだったりとかしたら――

―――でも、辺りを見回したところで、この部屋にはこの椅子以外何もない。
水辺もないから、バトルもできない。
大人しく話すほかない。……俺に話すことなんてあるのか?

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「あ、うーん…多分、カメラさんと俺の世界は、すごく違うってわけではないんじゃねーかな。
一日24時間で、一週間は7日。一年は365日くらい、だろ?
魔法はよくわからない、でも科学が発達してる。だから多分、似たような地球なんだと思う……多分な?」

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「俺の住んでる場所で他と違うことってーと……"アヒルバトル"ってのがあることかな。
前に知り合ったイセカイジンが言ってたんだ、他の世界にはないんだって。
ま、ソイツがマジのイセカイジンだったかは知らねーけど」

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「水の上にアヒルバトル用のアヒルを浮かべて、それを操って戦うんだ。
沈んだり、フィールドから落とされたりして戦闘不能になったら負け。逆に相手をそうしたら勝ち。
ここにアンタ用のアヒルとかプールとかは、なさそうだけど…。
俺、たま~に店のイベントで近所の子にやり方教えてっからさ。いつか教えてやんよ」

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「あ、それ関係でさ、古代アヒル文明とかアヒルエネルギーとかってのもあるんだって。俺の世!
店のバイト俺のダチがそーゆーの詳しんだけどさ、俺はそっち系詳しくねーから割愛な。」

そうして、ざっくり世界の話をして…"普通"の定義を考える。

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「で、普通……普通かぁ~~、普通じゃないもの沢山見ちまったから、俺にはムズカシーよ。
……あ、でも、多分だけど」

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"それがそうであることを疑問に思わない"って状態は、普通ってことじゃねーかな?
なんつーか…外から見て変でも、中の人がそれに気づかないなら、普通じゃないことに気づけないだろ。」

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「少なくとも、俺は親父がよく失踪するのはおかしい!ってこと、小学校になるまで知らなかったし。
自分が普通かそうじゃないかなんて、自分以外のものを知らないと判断できねーよな。
まあ、そもそも俺に普通であるかどうかを判断する権利なんてないだろうけど。」

他人のいう「普通じゃない」とか、「変」とかは、あまり信じられない。
結局、変か普通かを決めるのは個人の価値観なんだし?